第9章 【刀剣乱舞✕東京喰種】よだれ塗れの刀剣は主がお好き
演練当日。
こんのすけに案内され、いざ会場に着いたはいいがあの日から一段と強くなった周りの無遠慮な視線が痛かった。
当然の如く奇異や軽蔑の目がほとんどで、そのにほんの少しだけ興味と畏怖の目が混じる。
僕にはこの状況が息苦しく感じるのに、主は何処吹く風。
加州や乱と手を繋いで楽しそうにしている。
そんな主、今日は顔を隠すために特殊な面を着けている。
確か、べねちあんますく、だったかな。
顔の上半分を隠す面は鼻先まで覆い、目尻に色鮮やかな鳥の羽が縁取っている煌びやかな面だ。
普段ぽやんとして話を右から左な主が、演練参加の条件を守っているという事実に拍手喝采を送りたい。
じっと主を見つめていると、視線に気づいたらしい彼女は僕を見てふにゃりと笑った。
その視線で不躾な視線は差程気にならなくなった。
受け付けを済ませ、何処で待機していたらいいのか迷っていると次試合がある組は呼び出しがあると、こんのすけが教えてくれた。なんとも面妖で便利なものだ。
初演練で一試合でも勝てたら御の字だな、なんのなんの勝って主に花を添えよう、なんて談笑していると遠巻きに陰口を囁く声まで聞こえてきた。
「見て、何あのお面。いや、マスク?」
「仮面舞踏会的な?ウケるー!何処かのお貴族様気取りかな?かな?」
「だっさ(笑)」
それは確実に個人指定し攻撃するもので、ここまで個性的な面をしているのは主だけだから、誰がどう聞いても僕らの主のこと。
ふつふつと腸が煮えくり返るのが分かる。
主の面の何がおかしいと言うのか。
「かせん」
怒りに目がくらんでいた僕は、近くに主が来ていたことに気づかなかった。
加州や乱とは離れたのか、一人で僕の眼前に立っている。
僕は自分の依り代に手をかけていた。
怒りに任せて、危うく抜刀するところだったのか。
「呼ばれたよ、行こう」
くいくいと裾を引き、笑ってみせる主のなんと健気なことか。呼ばれた、と主は言っていたが、それにすら気づけないとは。
落ち着かなくては。之定が一振りとして醜態は晒せない。
気を引き締めるため深呼吸をしていると、乱と加州が近づいてきた。満面の笑みといえばそうなのだが、目は口ほどに物を言うとはこのこと。二振りの双眸は怒りの炎をごうごうと燃やしていた。