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混合短編集

第9章 【刀剣乱舞✕東京喰種】よだれ塗れの刀剣は主がお好き


だが主を受け入れたのは、この本丸に所属する物(者)だけ。
彼女の手によって顕現された刀剣男士と、この本丸担当のこんのすけのみ。
買い付けや、諸用で外出しようものなら容赦ない奇異の眼差しや言われのない謗りが僕らを苛んだ。


初めのうち、ある程度は仕方のないことだと割り切った。
人喰いであること、他者の霊力を喰い自分のものにすること。それに間違いはないのだから。
でも、僕ら刀剣男士を餌にしているだとか、歴史修正主義者や検非違使すらも喰っているだとかは違う。
主はそんなことはしない。
審神者に着任する前にきちんと政府が調べ、確かな結果も出ている。公表もされたはずだ。
それなのに。

「あの人でしょ?人喰い審神者って」
「え!?そうなんですか、主君!」
「どっかから攫ってきた審神者とか、顕現したての刀剣男士食べて霊力を奪ってるらしいよ」
「なんとおぞましい...」

「噂じゃ、あの審神者のところの刀剣男士も人喰いだとか」
「超ヤバいじゃん!」
「審神者が人喰いなら刀剣男士も人喰いなんだね。近づいたら食べられちゃうかもよ」
「や、やめてよ!怖いな!」

違う、違うッ。
百歩譲って僕らのことは構わないさ。
だけど、主は僕ら刀剣男士は食べない。審神者だって攫ってない。事実と異なることを言わないでくれッ。

燻っていた小さな不満は徐々に大きく黒くなっていき、そのうち耐えきれなくなった物(者)が出始めた。
筆頭は同田貫だ。

その日、荷持ちとして買い付けに同行していた彼は小さくも心無い謗りを聞くや否や、それは間違っているのだとそこかしこに向けて怒鳴った。
その気持ちはよく分かる。
どうして分かってくれないんだ。嘘や偽りの噂に騙されないでくれ。そう思わずにはいられない。

主の情報を、政府は包み隠さず全て公開をしたにも関わらず、他の審神者達からの理解を得られず。
噂が噂を呼び、内容は脚色され。

今、身に覚えのない噂が往来を闊歩している。


同田貫が怒鳴ろうとも小声の謗りは止まず、ついに(ただでさえ短い)堪忍袋の緒が切れた同田貫は依り代を抜き放ち、それを言い放った者に切りかかろうとする事態にまで発展した。
僕や燭台切が止めに入らなければ、あわや流血沙汰の大惨事となるところだった。
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