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混合短編集

第8章 【刀剣乱舞✕色々】チートな幼女の過去話


「なあ、俺たちの本丸に来てくれよ。俺たちを、助けてくれよ」


それは、絶望ゆえに希望に縋り付く言葉。
御前の前に歩み出て、乱と鯰尾を押し退け跪き、泣きそうに縋る彼はいつになく弱々しい。


「たぬきさん!ダメだよッ、何言ってるの!」
「そうだよ!ダメだ!」

そんな彼の言葉に同意したかっただろうに、乱と鯰尾は同意せず制止する。その表情は苦しそうだった。

「黙れッ!皆、もう限界なんだぞッ」


多くの仲間を心配する言葉であるが故に。
なんとしてでもこの機を逃す訳にはいかない。
そう言わんばかりの言葉は私の心に重くのしかかった。

私だけでなく、彼以外の五人の心にものしかかったことだろう。
燭台切殿は切なげに眉を寄せた。

「同田貫くん...」
「こんな塗り薬じゃ間に合わない事くらい、お前らだって分かってンだろ!?」

同田貫殿は困惑の表情で自分を見る五人に吼えるように叫ぶ。

そうだ。
あんなに小さな入れ物に入った塗り薬など、三十人以上いる刀剣男士を前に、全く足らない。間に合わない。
誰もが中傷、あるいは重傷なのだ。

「分かってるけど...」
「でも、そういう訳には、いかないよね...」

二人は視線を彷徨わせ、乱は蜻蛉切殿を、燭台切殿は前田を見やる。目が合った二人も困惑中だ。


本音を言えば、自分の本丸に来て欲しい。
この暗闇から救い出して欲しい。
しかし、その願いは一かバチかの危険な賭け。

失敗すれば自分はおろか、仲間の命はない。
そして、この幼い命すら巻き込むことになるのだ。

(そう簡単には巻き込めんでしょうな)

六人は一斉に口を噤んだ。
苦しそうに、悔しそうに。
目の前に希望があるのに縋れない事実に。



「分かった。どうにかしよう」


俯いていた六人は即座に顔を上げた。


「正気、ですか」

最初に我に返ったのは、蜻蛉切殿。
嬉しいやら不安やら理解出来ていないやらで、なんとも言えない表情になっている。

御前はそれを無視するかのように口を開いた。


「本丸IDを教えて。探し出してみせる、絶対に」

はっきりと言いきった御前は、目線を合わせるように膝をつく同田貫殿の両手を幼い手で包み込む。

「必ず、見つけ出してみせる」

迷いのない声色。揺るがない眼光。
不安げに御前を見つめる六人には眩しく見えたことだろう。
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