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混合短編集

第8章 【刀剣乱舞✕色々】チートな幼女の過去話


彼女が怪我をしないのはいい事だが、知らなければ見えなければただの怪奇現象だ。
知れてよかった、という事にしておけと言う事か。

なんとも微妙な気分だ。


「話は以上です。質問はごさいますか?」

めくっていた資料を元に戻し、御前へと顔を向ける猫面の女。
どうやらこれで終わりらしい。

「ない」

御前は言い淀むことなくはっきりと答える。
その表情を見て、女は手に持っていた資料を手放した。
手放された資料は人型の札となり、ばらけて消えた。

消えゆく白に目もくれず、御前に背を向けさっさと歩き出す女。
一体何処へ行くつもりなのか。
そう考えていると、御前がついて来ていないと知った女はおもむろに立ち止まりぽつりと言った。

「これより貴女様をとある場所へお連れします」
「とあるばしょ」

この御方を何処へ、何の目的で連れて行くつもりなのか。
勝手にあれこれ決めて、なんと無礼な女だ。
ぶつぶつと文句を言っていると、聞こえていたのでは?と聞きたくなる間合いで答えが返ってきた。

「迦具月宮(かぐつきのみや)家所有の豊穣の社(ほうじょうのやしろ)です。
そちらで審神者として活動していただきます」

(なんと...)

あの御社(みやしろ)は迦具月宮家所有だったのか。
本丸、と言っても差し支えない程広いあの屋敷は、迦具月宮家の物ということ。

そんな神聖な屋敷で、当たり前のように普通に生活していたのかと思うと、罰当たりな気がしてならない。
末端とはいえ神だ、とは言うが。
あの、あの月読命の御子孫の生活拠点で生活していていいのだろうか。

冷や汗が伝うのを感じながら、象牙色の景色が黒く溶け落ちるのを見届ける。
その際、御前がこちらを振り向いた気がした。



ーーー


ここまで来たら、もうどうにでもなれと思える。
次はなんだ、と目を開けば見覚えのある屋敷の門。


不意につんと鼻につく鉄錆の臭いがした。
間違いない。これは、血の臭いだ。
でもどこから...。

臭いの元を探そうと、門から目を離し後ろを向く。
と、私の真横を御前が通った。


彼女の向かう先には、身体の至る所から血を流し倒れている同田貫殿がいた。
その様子は、もはや虫の息と言っても過言ではない有様だった。

運悪く検非違使にでも遭遇したというのか。
いやしかしそうでもなければ、こうはなるまい。
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