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混合短編集

第8章 【刀剣乱舞✕色々】チートな幼女の過去話


気配を感じさせず、煙と共に現れたのは猫の仮面で顔を隠した女。
りくるーとすーつなる濃紺の衣服を堅苦しく身につけた女は恭しく一礼する。

少しして体を起こすと、おもむろに空(くう)をなぞった。
すると、何も無かった空間から突如幾枚の紙が現れ、元々そうあったかのように女の手に収まった。

紙を手に取った女は、御前に向き直り一つ紙をめくった。

「今御装着されている義手義足に不具合はございませんか?
無いようでしたら、御要望通り貴女様の血筋について調べてきましたので、お教え致します」

そうだ。御前はあのクズ男に左腕右足を切断されていた。
今こうして杖を使うことなく立っているのだから、何かしらあるのだろうとは思っていだが。

時代の進歩とは凄いものだ。
こうも本物と見まごうばかりの義手義足があるとは。


御前は白い手袋をした左手を動かし、右足をじっと見つめて一つ頷いた。
不具合はないと意思表示をする御前は、御自身の血筋のことを聞きたかったらしい。


それもそうだろう。

そういった事は、大体は成人をもって親から子へと伝えられることが多い。
幼いうちから懇々と言い聞かせて育てることもあるようだが、今回は前者。


御前の母君は成人はおろか、御前が十を迎える前に亡くなられている。
父君は御前の生誕後と、弟君がお生まれになる前に母君のもとに現れて以降、常に消息不明なので論外。


誰に聞くことも叶わず。
知ることも出来ず。

その身に流れる血が何処に繋がっているか、この時知ったのだろう。
身内でもなんでもない、たかだか役人のこの女に教えられて。
仕方がない事だといえ。

そうにしても、だ。
彼女を異常なまでに慕い従う人馬たちの、あの呼び名の由来はここにある。
私たち刀剣男士が当たり前のようにお呼びしているあの呼び名の。
そんな予感がした。


薄らと期待を込め、じっと待つ。
女はさもなんでもないかのように、息をするように話し始めた。

「貴女様のお母様ですが、かの有名な迦具月宮(かぐつきのみや)家の直系。そして次期当主でした」

(迦具月宮家だと!?)


その家名を知らぬ者は恐らくいないだろう。
迦具月宮家の歴史は古く、平安時代よりも前に存在していたという。
そして未だ絶えることなく続く、最も天皇家に近い宮家。

思い出していると、女はそれに似通ったことを解説していった。
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