第8章 【刀剣乱舞✕色々】チートな幼女の過去話
床に鋭い刃が当たった音であり、左腕が断たれた音だ。
あまりに呆気なく切断された。
「あ゛あぁあ!!」
もう聞きたくなかった。
どんなに強く耳をふさいでも聞こえてしまう声は、私の魂(心)を握り潰さんばかり。
切り落とされた手足はそこらに散らばり、切断面からは骨が見え血が流れ出る。
御前の顔色は血の気などなく、もはや白だ。
呼吸も随分浅くなってしまった。
このままでは本当に、本当に死んでしまう。
嗚呼誰か。
誰かッ。
誰かッ!!!
あの御方を助けて欲しい。
私では無理なのです。
私では駄目なのです。
「ははは!あースッキリしたァ!」
男のその言葉を最後に、視界は暗転した。
暗くなってもなお男の高笑いが反響していた。
ーーー
突然暗転した視界は、突然真白の空間へと変化した。
いきなりの変化に目が慣れない。
ぼんやりと霞んで白かっただけの部屋は少しづつ黒や茶が線を描き、その部屋が病室であることを教えてくれる。
一つ一つがかーてんで仕切られ、一番奥のべっどのみがかーてんを引いておらず。
その仕切られていないべっとに惹かれ、無意識に足が動き近寄る。
御前は。
あの御方はどうなったのか。
無意味に左腕右足を奪われたんだ。
あれだけの大怪我をして、生きていれば御の字といったところか。
引き寄せられるままに、この先に彼女がいることを期待した。
「可哀想に」
まただ。
黒い服を身に纏った女性たちのときのように、後ろから声が聞こえた。
「まだ8歳だって」
「親がいないなんて」
「お金はどうするのかしら」
振り返り、そこにいたのは薄桜色の揃いの服を身に纏った女たち。なーす、だったか。
黒い服の女たちよりは小声とはいえ、こそこそと話し続ける。
その内容は、聞いていて気持ちのいいものではない。
どこまでもこの世界の大人たちは、あの御方をあれやこれやと謗る。
同情し憐れんでいる自分に酔っているのだろう。
当たり前の事を心配しているかのように言っているようで、紡がれた言葉に心配の色はない。
そんな女たちの後ろから黒い服の男が近寄ってくる。
こつこつと靴の音を廊下に響かせ、その距離を縮めて。
真後ろにまで接近した男はなーすの肩を叩き、胡散臭く微笑み押し退け御前に近づく。
笑みを向けられた女たちは頬を染め見蕩れていたが、離れて行った。