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混合短編集

第8章 【刀剣乱舞✕色々】チートな幼女の過去話


「お前らを引き取ってやったのはこの俺なんだぞ!有難く思え!」

言い方から察するに、どうやらあれだけ疎ましそうにしていた人々の中で、御前と弟君を引き取ったのはこの男だったらしい。
有難く思えなどと、なんとも恩着せがましいことだ。
だったら引き取らねば良かったろうに。

(これが普段ならばお覚悟案件ですな...)


御前を拳や平手打ちで殴っては引っ張り起こしを繰り返す男。
殴られ続ける彼女の頬は目も当てられない程腫れ上がり、鬱血が悪化し赤紫色になってしまっている。

ついぞ倒れ込んだままぴくりとも動かなくなった彼女に冷めた視線を送り、足蹴にした。



「ねぇね?」

不意に厨(くりや)の真横にある扉から、御前の弟君が顔を出した。ぺちぺちと音を立てながらはいはいをして少しづつ近づいてくる。
夜だというに物音を派手に立てたこともあり、寝ていたが起きてしまったのだろう。

幼い眠たげな声に気づいた御前は、息も絶え絶えに倒れ込んでいたのが嘘なのではと思うくらい素早い動きで飛び起き、弟君の下へとふらつきながらも走った。
赤子に手を伸ばしかけていた男よりも早く。
弟君をすぐに抱き上げ、男に背を向け隠した。

その一連の流れを見ていた男は感情の読めない顔で、腕を組んでただただ見ている。
そして、ニィと口元を不気味に歪めた。


「お前らなんか、金さえ手に入りゃ無用なんだよ」

にやりと薄気味悪い笑みを浮べた男は、ふらりとその場を離れたかと思いきやすぐに戻ってきた。
その手には何処からか持ち出された大振りの鉈。

新品以上に、必要以上に磨(と)がれた鉈だった。


一体何をするつもりなのか。現実となって欲しくはないが、想像できてしまった。最悪の未来を。

不意に何かを感じ取った御前は、素早く弟君を抱き込むように抱え直し男から隠す。
男の表情や手に持つ凶器を見せぬように。
さすがに怯えを滲ませた表情で、じりと後退(あとずさ)った。

男はそんな行動すら腹立たしいようであっという間に距離を縮め、御前の左腕を掴んで捩じ伏せ、床に固定するように押し付ける。

捩じ伏せられた勢いをそのままに倒れた彼女。腕にいる弟君は、突然の衝撃で火がついたように泣き出した。
当然だろう。

男は心底疎ましいと言わんばかりの表情で、その鈍く光る刃をゆっくりと振り上げる。
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