第8章 【刀剣乱舞✕色々】チートな幼女の過去話
大人を頼らず(利用せず)して、どうせよと言うのか。
面倒がらせぬように、邪魔だと思われないように。
言い方こそ悪いが、それこそ猫を被って隠し通す筈。
全ては自分とまだ赤子である弟君の命を守るため。
散々見下しておいて、御前と弟君を引き取ると名乗り出る輩がいるかどうかは分からないが。
そんな輩がいたと仮定して。
まさか自分が彼女の都合の良いように利用されていることになど、微塵も気づきはしないだろう。
ーーー
じわりじわりと色付く視界。
次は何処なのか。何を見せさせられるのか。
不安が不安を煽る。
だが、これまで見てきた事象を顧みるとどんどん悪い方へと進んでいる気がする。
そしてそれは気の所為ではないのだろう。
まだこれ以上に良くない事が起こるのだとすれば。
もう見たくない。
もうこれ以上、御前の哀しむ姿を見たくなかった。
ぼんやりと色だけが認識出来ていただけの世界(視界)は、白と黒のこんとらすとから焦茶の際立つ色合いに変わった。
そして、ごみ袋がそこら中に散乱している。
(汚いな...、今度は何処なんだ?)
先程とはうって変わって、この部屋は酷く狭く感じる。
こぢんまりとした部屋をざっと見渡すときっちん、とやらの影に山伏殿とさして変わらない背格好の男が目視で確認できた。
下を向いて何をしているのだろうか。
好奇心とは異なる、よく分からない焦りにも似た衝動に駆られ少しづつ近寄る。
と。
ーパンッ
突如、破裂音が響いた。
破裂音から連想できるのはくらっかーとか言う行事に使う物くらいで。
そうにしてはやけに生々しい音。
慌てて音源に駆け寄って目にしたものは、我が目を疑うものだった。
「この無能の!愚図が!」
ーパンッ
平手打ちで殴られ軽々と飛んでいく幼い身体。
冷蔵庫に背中を打ち付け、痛みに悶え苦しんでいる。
「何回言えば分かるんだ!何度も何度も言わせるな!」
男は起き上がれず倒れ込んでいる御前の髪を鷲掴んで、ぐいと引っ張り起こした。
その際、ぶちぶちと引っ張られた髪が抜ける音がした。
ようやく見えた顔は殴られたせいか、ぶつけたせいか赤黒く腫れ上がっている。
口元には薄ら血が滲んでいた。
そんな彼女に容赦なく拳を振りかざす男。
また、今度は握り拳で殴られた御前は額を切ったようで、こめかみから一筋血を流している。