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混合短編集

第8章 【刀剣乱舞✕色々】チートな幼女の過去話


本人たちは聞こえていないと思っているようだが、御前には聞こえているらしかった。
心無い言葉が重なるたび、歯を食いしばって表情は歪んでいく。しかし泣くことはなかった。

遠巻きに様子を見ている筈なのに。
尚も会話を止めない彼女たちは、あの御方の事を微塵も可哀想とも思わないらしい。
我が子でないならどうでもいいとでも思っているのだろうか。

べらべらと話し続け、聞くに耐えない声は徐々に大きくなっていくばかり。


もういっその事、無駄口ばかり叩く女性たちを細切れに切り刻んでしまいたかった。
堪えるように小さく震える御前に寄り添い、耳障りな声がその耳に届かぬよう抱きしめて差し上げたかった。

例え、この状況故に叶わないのだとしても。


それくらい腹の底から怒りが込み上げてきた。



「ちょっと、誰が“あれら”を引き取るのよ」

「うちはお断りよ!育ち盛りが3人もいるのに」
「そんな、うちだって嫌よ!介護があるのにごめんだわ!」

よくもまあそれだけ言葉が思いつくものだ。
そんなに、そんなに御前と弟君を引き取るのが嫌なのか。
だったらそもそも話題にしなければいいだろうに。

彼女たちは言いたい放題言った挙句、鼻で笑いながら駄目押しの一言を放った。


「引き取ったところで何の得も有りはしないわよ。邪魔なだけじゃない」


馬鹿にするように吐き出された言葉は呆気なく心を抉り、泣くまいと固く閉じられた双眸から一筋の涙が伝った。


その息苦しい哀しさを滲ませた様子を見届けたのち、無情にも再び景色は歪んだ。


ーーー

(あの女性たちに優しさは無いのだろうか)

いつの間にか黒に塗りつぶされた視界を、ただぼんやりと眺めながら思う。


損か得かだけで幼子を引き取るか否かを決めるなど。
得がなければ、受け入れたくないと言うのか。
彼女の普段の姿を何一つ知らないくせに、何処がどう邪魔だと言うのか。


嗚呼。
何と愚かで、何と強欲なことか。

仮に、本当に得が無く邪魔であったとしても。
あの御方はそう思わせないよう上手く立ち回るだろう。


いつの世も、幼子が一人で赤子を育てながら生きていくのは相当厳しい。
まず第一に金銭はどうするのか。
住まいは?食事は?衣服は?
子どもが一人でどうにか出来る問題ではない。

稼ぎのある大人の庇護がなくては、満足に生活など出来ない。
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