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混合短編集

第8章 【刀剣乱舞✕色々】チートな幼女の過去話


そして、それ以上に。

出来ることならば不幸に見舞われることなく。
誰よりも、いっとう幸せであれ。


そんな願いが込められた一言。
我が子がどんな人生を歩むのか、生まれてもいない故に未知。
だからこそ、ただただ願うのだろう。


何故だか、羨ましく思えた。
こんな風に生まれる前から愛され、望まれ必要とされる赤子が。

私もこんな風に望まれてつくられたのだろうか。
もしそうならば、どんなに幸せだろう。
確かめる術(すべ)など、ありはしないと分かってるが。
不意に、知りたくなった。


羨望の眼差しを向けていると、女性はうふふと笑った。
その笑みはどこか哀しげだった。

「いいえ、貴方に似た方が良い子になるわ。誰よりも秀でて、誰よりも勇敢な子に。私に似ちゃったら虚弱になってしまうもの」

男性の言葉に苦笑する女性は夢見るように、泣きそうな顔をしながら呟いた。
確かに、女性は病的に色白で線が細く、子を産むには少々どころかかなり厳しいように思える。
よくぞ子を身篭ったと言える程。


だがそれが何だ。

私からしたら、団栗(どんぐり)の背比べだ。
虚弱であるにせよ。何にせよ。
どちらも誕生間近の我が子の幸せな未来を願っていることに変わりはないのだから。


幸せそうな男女を見ていて、ふと気づいた。
この二人の目元や口元、仕草がどこか赫映御前を彷彿とさせるのだ。

この男女は恐らく、いや御前の実親なのだろう。
父親らしき男性の笑った顔には、御前の面影がある。
どうやら御前は父親似のようだ。

巷では、女子は父親に似ると言われているらしいから。
そう思って見れば見る程、瓜二つと言わんばかりによく似ていた。



この世に生を受ける前からこんなに愛されて、望まれて、願われて。

それなのにどうしてあんなに暗闇のような、影に沈んだ目をなさるのか。
一体何があったのか知りたくなった。

親から愛情をたくさん貰い育ったのならば、その双眸はもっと煌々と輝いていてもいい筈なのに。

そうは思えど、答えてくれる者などいる筈がない。
答えを求める代わりに、じっと女性を見る。
女性は大きく膨れた腹を愛おしげに撫で、小声で「早く出ていらっしゃい」と呟いた。


その様子を見ていると、急に景色がぶれて滲みはじめた。
ぐにゃり、と歪む視界に吐き気を覚える。

は、と気づけば既に別の景色になっていた。
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