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混合短編集

第8章 【刀剣乱舞✕色々】チートな幼女の過去話


ついて来いということか。
...まあ、見ているだけでは埒が明かない。
ぐ、と意を決して小さな足跡について行く事にした。


少し前を行く足跡は一つの襖(すふま)の前で止まってしまう。
目の前からは先程よりは強く、でも弱々しい御前の霊力を感じる。
どうやら案内したいのはこの先らしい。


足跡の示す先の白黒だった襖は、最初からその色であったかのようにじわ、と浮き出るように色付き始めた。

白黒では分かりづらかったが、日本家屋に相応しい、天翔ける青龍とそれを睨みつける白虎の絵が描かれていた。
立派な襖の筈なのに、それが逆に違和感だった。

まるで迷い人を誘(いざな)うような。


この先に何があるのか想像もつかない。
ただの夢であるなら特に危険なものは何もない筈。私の脳内で構成されているのだから。

確実に見た事のないと言い切れる風景を見た時点で、ここはどう考えても、所謂(いわゆる)異空間なのだろう。
然らば、心してかからねばなるまい。

待ち受けるものが如何なるものであったとしても。


再度己を叱咤奮起し、最大限の警戒をする。
己の依り代から手は外さず、いつでも抜刀できるように構えて。
ふう、と一息ついて、音をたてぬように襖を開いた。


(何なんだこの部屋は)

日本家屋なのだから和室があると思っていた。
否、思い込んでいた。
しかしその予想は大きく裏切られ、襖の先にはとても広々とした洋室があった。
例えるなら本丸の大広間くらい。いやそれ以上かもしれない。

部屋に足を踏み入れ、その豪奢な内装に目を奪われる。
部屋の至る所、何から何まで贅の限りを尽くしたと言わんばかりの豪華絢爛さ。
こんなに素晴らしい装飾が施された調度品など、未だかつて見たことがない。
本丸屋敷にだってこんなに華美なものはない。

上品な豪華さに圧倒されながら一歩踏み出すと、また幼い足跡が現れ、軽やかに奥に見える扉へと続いていく。
今度はそれに臆することなく、倣うように足を進めた。


いや、しかし。

こんなに広い部屋が、まさか生活空間だというのか。
違うとしても、何のための空間なのか皆目見当もつかない。
皆で食事をする場であるなら、細く長い大机(おおつくえ)や沢山の椅子が有る筈。

それらが無いとするなら、想像の範疇を超える。


きょろりと見回しつつも、点々と続く足跡について行く。
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