第7章 ☆【ハリーポッター✕魔法使いの嫁】蝙蝠と石切蜂の馴れ初め
待て。まさかアレを言うつもりなのか。
「やめろッ」
ゾッとして即座に止めに入るが、赤面した私の制止などあってないようなもの。
思い切り鼻で笑われただけだった。
「照れなくてもいいだろ?あたしは気にしないし」
鼻で笑った挙句、私の肩に腕を回し笑い出したアンジェリカ。それにより彼女の身体が密着し、さらに顔が火照る。
子供たちは何も言わないが、その微妙な表情はまたかと言いたげだ。
だから!子供たちの前だと!分かっているのか!
羞恥に耐えながら彼女をべりっと引き剥がし、一呼吸おく。真っ赤になった顔を、ニヤけそうになる口元を片手で隠すようにしながら叫んだ。
「私が気にする!」
お前は(ある意味)他人事だからそう言うが、当事者である私は今思い返してもかなり恥ずかしいんだぞ!
それを子供たちに暴露するのか!
プロポーズうんぬんは教えなくていいんだ!
そういうつもりで言ったのに彼女は、どうしてさ、と不思議そうにするだけ。
本当に。
こっちの気持ちを考えてほしいものだな。
「まあまあ、いいじゃねェかよ。アンジェリカ」
話に割り込んできたのはアンジェリカの使い魔。
手には水掻き、両足はまるで魚のヒレのよう。
手のひらサイズな水妖、ヴォジャノーイのヒューゴだ。
ニマニマ笑うさまは腹立たしい以外の何物でもない。
相変わらず人を馬鹿にしたような態度だ。
彼はすい、と空(くう)を泳ぎ、私の目の前までやってくる。
そして腕を組み、ふんぞり返って言った。
「ンなことよりよォ、オレにカンシャってもンはねェのかよ。なァ、セブルス」
「は?」
一体何に感謝しろと言うのか。心当たりがなさすぎて分からない。
えらく自信満々なヒューゴの言葉の意味が理解出来ず、思わず首を傾げる。
彼は私の反応が気に入らなかったようで、ヒレのような小さな足で私の顔をぺちりと蹴った。
「あンとき、オレがわんころ野郎に水ぶっかけてなきゃお前はアンジェリカと番になれなかったンだぜ?」
分かってンのか?と続けるヒューゴは私の鼻をつつき、大きく溜め息を吐いた。
文句を言うくらいならなぜ助けたと聞きたいところだが、それ以前に。
なんとまあ、恩着せがましいことで。
言う代わりにじろりと視線を送る。
彼はそんな視線もものともせず、寧ろ自慢げな態度で言った。