第7章 ☆【ハリーポッター✕魔法使いの嫁】蝙蝠と石切蜂の馴れ初め
そう小声で言うと、アルシアは照れたような呆れたような表情をしながら温かい目で見てくる。
ヨセフに至っては再びペンを握り、それも書くね!と張り切って書き始めた。
やめろ!書かなくていい!
既に書き出しているが、それでもやめさせなくてはと慌てて手を伸ばす。しかし、ヨセフは紙を握りしめて私の手から逃れるようにちょろちょろ動き回る。
魔法を使えばすぐに取り上げられるというのに。
あまりにくだらない。でも私は笑んで、その楽しい争奪戦を続けた。
我が子とこんなふうに馬鹿げたことをするなんて、いつぶりだろう。もう何年も放ったらかしだった気がする。
感慨にふけっていると、アルシアが目の前を通過しようとする片割れの首根っこを掴み捕まえ、溜め息を一つ吐いた。
「...お母さん、学生の頃から変わってないんだね」
しみじみと呟いたアルシアは、ヨセフを捕まえていた手を放し私の顔を見た。
急に放されたヨセフはといえば、思い切り首が締まっていたようで。おえ、と気分悪そうにしていた。
「そうだな。あのサバサバした性格は全く変わってn」
「楽しそうだな。あたしも混ぜろよセブ」
同意の言葉を最後まで言い切ることは出来なかった。
さらりと話に割り込んできた妻アンジェリカ。
いつの間にリビングに来ていたんだろう。
「...」
おどろおどろしい雰囲気が漂っている気がして、後ろを向くのを躊躇う。
どうしようかと固まっていると頭をがしりと掴まれ、強制的に振り向かされた。
おい、痛いぞ。わざとだろう。
恨めしげにジト目で見るが、当の本人といえば何処吹く風といったていだ。
菫色の双眸に見つめられて、まるで見えない何かに縛られたかのように動きが止まる。
そんな私の頬に少しカサついた両の手を当て、にんまり笑う彼女。仕事をしてきたばかりのその荒れた手が愛おしく、少しだけ擦り寄った。
...はたから見たらいちゃついているようにも見えなくもないだろう。
そこではたと我に返り、名残惜しくもその手を振り払った。
やめろ、子供たちの前だぞっ。
「どうせなら、あの事も言ったらどうだ?」
私が照れながら思い悩んでいることなど露ほども思ってはいないのだろう。
呑気に、余分なことを言ってくれるじゃないか。
「「あの事?」」
息子と娘は二人揃って首を傾げる。その目は、良い事聞いたと言わんばかり。