第7章 ☆【ハリーポッター✕魔法使いの嫁】蝙蝠と石切蜂の馴れ初め
噛み合わない、しょうもない喧嘩をするリリーとポッター。
あまりにくだらない一方的な喧嘩の発端は僕だ。
本当ならば止めなくてはならないのだろう。
だけど、僕はそれどころじゃなかった。
僕の視線に気づいてか、奴に怒り続けるリリーの傍らに立つ彼女は僕の方を見た。
見て、くれた。
目が合った。
菫色の双眸が僕を捕らえて離さない。
どうしよう胸が痛い。鼓動がうるさい。
リリーとポッターのくだらない喧嘩に呆れるでもない、怒るでもない。
人をおちょくるブラックの声にも特に思うことはなく。
野次馬どもの鬱陶しい視線すらも。
そんなどうでもいいことは気にもならなくて。
彼女に見つめられるだけで、不思議と心が踊った。
もっと見ていて欲しい。
(その視線が僕のモノになったらどれほど嬉しいか)
どうか話しかけて欲しい。
(僕のために紡がれる言葉なら、なんだって嬉しいから)
目が合っただけなのに、こんなにも。
好きになってしまった。
Ms.バーレイを。
嗚呼、顔が熱い。
きっと、これを一目惚れというのだろう。
いや“運命”か。
ーーー
「え、じゃあお父さんの一目惚れなの?わあ、意外」
「こらッ、ヨセフ!」
本当にこの次男坊ときたら、馬鹿正直すぎやしないか。
こちとら恥を忍んで教えたというのに。
この天然息子、今の話を宿題用紙に書きつつも私が話し終わった途端これだ。
...そういうところは妻に似たのだろう。
あの母にしてこの子あり、か。言い得て妙だな。
先程から妹に諫められているのに懲りることなく、当の本人はのほほんと余計な一言を口にする。
まあ、一目惚れをしたということに関しては自分でも驚いているから異論はないのだが。
「...いつだって見返りなく手を差し伸べてくれる彼女は、私にとって救いだった」
そうだ。
どれほど彼女に救われてきたことか。
在学中の鬱陶しい嫌がらせに、闇陣営からの執拗な誘い。
逃げたくとも、逃げ場などどこにもなく。
ただ、アンジェリカ・バーレイという一人の人間が唯一の心の拠り所だった。
彼女がいたからこそ陰湿ないじめに耐えられたし、何事にも負けぬ強い意思を持つことができた。
本当に感謝している。
彼女を愛して、そして結婚して良かったと思う。
忌々しい奴らのおかげだと思いたくはないが、あの一件があったからアンジェリカと出会えた。