第7章 ☆【ハリーポッター✕魔法使いの嫁】蝙蝠と石切蜂の馴れ初め
鬱陶しそうな声の正体は、どうやら女子生徒のようで。
ちらと声が聞こえた方を見るが、廊下にうつ伏せに倒れ込む僕には女子生徒の足が見えただけだった。
いきなり水をぶちかけられたブラックは、何しやがる!と女子生徒に怒鳴っていた。
声の調子からすると相当お怒りのようだ。
それに対して女子生徒は、邪魔だったのさ、といい加減な返事をしていた。
ふん。ざまあみろ。
モヤモヤと燻っていた気分がスカッとした気がした。
未だ立ち上がれずぼんやりとブラックと女子生徒の(一方的な)口論を見ていると、視界の端から誰かが走ってくるのが見えた。
その誰かは、特徴的な赤毛の友人だった。
「やっと追いついたッ」
走り寄る軽い足音と共に聞こえた声は疲れきっていて、かなり走ってきたんだと安易に想像できた。
「なんだエバンズ、ついて来てたのか」
ブラックからの文句を適当に、耳をふさいで聞いていたらしい女子生徒は今気づきましたと言わんばかり。
いや、本当に気づいていなかったようだ。
本人に悪気はなかったのかもしれないが、その言い方は駄目だろう。
「なんだじゃないわよアンジー!」
案の定怒ったリリーは女子生徒に文句を言い始める。
アンジー。
最近リリーの友達になったらしいMs.バーレイか。
意味のわからない魔法具を作っては実験し、マクゴナガルに怒られている、あの。
どの寮生であっても無差別に実験対象としていて、悪戯仕掛け人すらも実験対象にしている、あの。
リリーの怒濤の勢いの罵声に、先に文句をたれていたブラックはドン引きして口を閉ざした。
「セブ!?」
女子生徒に怒鳴っていたリリーだったが、うつ伏せに倒れる僕に気づいて駆け寄ってくれた。
「大丈夫!?」
「...」
大丈夫、とは言い難い状態だったが大丈夫ということにしておこう。ひとまず頷いておいた。
肩を支えられ、なんとか立ち上がる。なんだか足も痛い気がする。全く、酷い目にあった。
リリーに僕の嘘はお見通しだったみたいで、心配そうに僕を見たあとポッターを睨みつけていた。
「ちょっとポッター!セブをいじめないでって何回言ったら分かるの!」
話しかけられたポッターは嬉しそうににまにましながら、内容はどうであれ喜んでいた。
「怒ってるリリーも可愛いよ!」
「話を聞きなさいポッター!!」
奴が話を聞かないのはいつものことだ。