第7章 ☆【ハリーポッター✕魔法使いの嫁】蝙蝠と石切蜂の馴れ初め
「お前には関係ないだろう!降ろせ!」
事態を打開しようとじたばた藻掻くが、ふらふらと揺さぶられ続け杖を取ろうにも取れない。
右に左に杖を動かすポッターのせいで、だんだん気分が悪くなってきた。
「関係ないだって?大いにあるとも!非常に残念だけどね!」
「う、わっ」
揺すられることに辟易してきた頃合でいきなり呪文を解除され、中途半端な高さから墜落する。
もはや不意打ちに近いタイミングの解除だった。
結局受け身を取る間もなく、どすんと腹から着地。
今度はさすがに教科書を持っていられなくて、放り投げるように手放してしまった。
コイツらと関わるとろくな事がない。
ずきずき痛む腹を押さえ、片腕でなんとか這いずって自分の教科書を拾い集める。
その様子をゲラゲラと笑いながら見ている奴ら。
(主にポッターとブラック。ルーピンは傍観、ぺティグリューはおろおろしているだけ。)
遠巻きにこちらを見て、くすくす笑う他の生徒たち。
何が楽しいのか。何が面白いのか。
助けてくれ、とは思わないが腹が立った。
片腕ではすぐに集めることができず芋虫のように這って、ようやく最後の一冊を掴もうとしたが。
黒い影が一閃。
「いっ」
もう少しで届きそうだった手はブラックに踏まれ、その一冊に届くことはなかった。
ぐりぐりとタバコを踏み消すみたいに僕の手を踏むブラック。その表情は普段そこらの女子生徒に振りまいている笑顔とは裏腹に、よくぞここまでと思えるほど楽しそうに歪められていた。
嗚呼、これが俗に言うゲス顔というやつか。
ブラックの顔を見ていると、視線に気づいた奴が口を開いた。
「そんなに勉強してどうすんだよスニベルス」
うるさい。そんなの僕の勝手だ。
どうしてお前にそんな事言われなきゃならない。
奴は人の手を踏んだままじわじわと体重をかけてくる。
そのうちピリピリ痺れていた手は鬱血しはじめ、感覚を失いつつあった。
感覚の薄れゆく手に、顔を顰める僕を嘲笑うブラック。
ニヤニヤ顔の腹立たしいこと。
「ま、お前勉強しか取り柄がねぇもんぶッ」
僕を馬鹿にしようとした矢先、突然頭上から降ってきた水をモロに被ったブラック。
呆然と見上げているとギャーギャーと喚き散らすブラックの声に紛れるように、カツカツと響く足音は近づいてくる。
「アンタら邪魔」
奴らではない、誰かの声が聞こえた。