第2章 【刀剣乱舞✕もののがたり】 岐の血とは恐ろしい。
あんなに仲睦まじい二人を引き裂くなど、あってはならない。
あんなに私を愛してくれる二人を消させなどしない。
私が守るんだ。
決意新たに、さてと門を見つめる。
やっぱり汚い。いや、穢れ過ぎている。
とはいえ、「本丸」とやらを守る要の門がこんなに薄汚れていえいいのだろうか。
一体何をしたらこんな穢れ方をするのか。
全くもって謎である。
悶々と悩んでも仕方がないので、壊れかけの門を開けることにした。壊れないといいが。
「遊馬は見ておれ」
開けようと門に触れるか触れないかのところで爪弾に止められた。どうやら、弦で細切れにするつもりらしい。
鼓がうずうずとしているあたり、自分が壊したかったのだろう。
お前がやると門戸だけで済まないだろう。
よって駄目だ。
「さて、掻き鳴らそうかい」
その一言ののち、べべんと聞こえたかと思えば目の前の門は木っ端と化していた。
一瞬か。
門戸が木っ端微塵になったおかげで、中がよく見えた。
「行くぞ」
穢れで汚いのは門だけではなかった。
中へと進みながら見渡せば、そこかしこに乾いた血痕がちらほら。真新しいものもある。
自然と表情はこわばり、眉間にシワが寄った。
こんなに血痕があるとは。
まるでここは真新しい「本丸」ではないようだ。
まさか中古、とか?
思うところは同じなのか、爪弾がううむと唸った。
「しっかし、ここまで穢れがあると婆(ばば)らまで侵蝕されそうじゃな」
爪弾の呟きに同意するように、神妙な顔をして頷く鼓と吹枝。
確かに先程よりも顔色が悪いようにも見える。
これはさっさと祓ってしまったほうがいいのかもしれない。
とはいえ。
「入ったはいいが、これからどうするんだ」
問題はそこだ。
あの役人二人は怯えた表情のまま、細かな説明をしてくれなかった。
おかげで、漠然としたことしか分からない。
「審神者」となり「刀剣男士」を「顕現」し、「歴史修正主義者」を倒せ。
こんな説明では、この状況でどうすればいいのか皆目見当もつかない。
穢れを祓いたくとも、祓い方が分からないのだ。
誰か教えてくれる者がいればいいのだか。
「結構歩いてるけど、誰にも会わないな」
吹枝の言う通りである。
先程から歩き回っているというのに、誰にも会わないのだ。
おかしい。
沢山の気配があるのに、血の匂いは鼻をつくのに。
誰もいない。