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混合短編集

第2章 【刀剣乱舞✕もののがたり】 岐の血とは恐ろしい。


高校の卒業式を終え、名残惜しげなクラスメイトと別れ帰宅すると、家に上がり込んでいた黒スーツの二人組の男に突然、審神者になってくれと言われた。
不法侵入の不審者かと問い詰めれば、時の政府の役人だとか。
はあ?嘘くさい。
だが、先に説明を受けた両親が言うには本当らしい。

突拍子もないことをいう彼らに警戒しながらも、そも審神者とは?と質問してみた。
なんでも、物に眠る想いや心を目覚めさせ力を引き出す能力を持つ者を「審神者」と言うらしい。
審神者がどういった役割を担うのかと父が問うと、その鋭い眼差しに怯えながら役人は答えた。
刀剣より生み出された付喪神「刀剣男士」を各時代へと送り込み、「歴史修正主義者」と戦うのだと。

なんともざっくりし過ぎな気もするが、大体は理解した。
理解はしたが、これはない。

「うわ、汚たない」
「遊馬、それは言わぬ約束よ」

説明もそこそこに連れてこられたのは、どこをどう見ても幽霊屋敷。汚い。
正面に見える門は明らかに朽ちていて、なんだかモヤモヤと瘴気が漂っている。
本当にここなのかと、ここに私達をほっぽいていった役人に小一時間程問い詰めたい。
いくら爪弾に言うなと言われても、こんなものを見てしまっては本音とは勝手に洩れるものだ。
隣に立つ彼女も死んだ魚の目をして、確かに汚いがなあと呟いた。だから言ったじゃないか。

「入らないと進まないけど、どうする?」

いい加減動こうとしない私の肩をポンと叩き、胡乱な目を向ける吹枝。そういうお前だって行きたくないんだろう。
顔に書いてあるぞ、行きたくないとな。

「帰る訳にはいかないからな。行くさ」

どんなに帰りたくとも、ここで帰ってしまっては歴史修正主義者とやらに歴史を変えられてしまう。
それだけは許してはならない。

役人の言葉を借りるなら、「両親のため」である。
両親の生きる時代を守るには、それよりももっと前の過去を守る必要があるらしい。
過去が歪めば、その時代より未来の時代は私の知る通りに進まなくなる。そうなれば、両親はおろか私まで消えるかもしれなくなるのだと。
それだけは許さない。

母は父と結ばれるまでに、言葉では表せないくらい凄惨な事件があったと聞く。
詳しくは照れに照れまくった父に邪魔され教えてもらえなかったが、父と出会ったおかげで幸せになれたのだと嬉しそうに言っていた。
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