第6章 【刀剣乱舞✕色々】チートな幼女は最強審神者
言い終えると、幼子の後ろに十二単を着る女の姿がぼんやりと発光しながら現れた。
女は畳んで持っていた扇を見事な手捌きで開き、飾り紐を優雅に泳がせて一度だけ扇いだ。
簡単な動作だったはずだ。
どう見ても明らかそんな音が出る動きじゃなかったと思うが、ごぉう、と派手な音と共に突風が吹き荒れる。
強風は隅々まで吹き渡っていき、僅かな澱みすらもさらっていく。
手足に纏わりついていた「何か」は、突風により生み出された鎌鼬で削ぎ落とされ。
こんなに軽かったかと思うくらいに楽になった。
圧巻だった。
思わず息をするのを忘れるほどに。
神秘的な光景に言葉もない。
感動というべきか、圧巻されたというべきか。
どちらとも言えないまま唖然呆然と本丸を見ていると、ドタバタとこちらに向かって誰かが走ってくる音がした。
嗚呼、主じゃないか。
さらには主に制止の声をかけながら走ってついてくる一期と鶴丸も一緒だ。
あいも変わらずボロボロだった。
鶴丸は中傷寄りの軽傷。
一期に至っては、弟たちを守るべく代わりに出陣し続けていたため重傷寄りの中傷。
どろりと纏わりついていた穢れは先程の突風で吹き飛ばされているおかげで、二人の身体に黒い靄は見えない。
だとしても、だ。
...全くその状態でよく走れるものだ。
まあ、だからこそ主の走る速度に追いつけていないのか。
二人の制止の言葉などなんのその。
どたどたと、女としていかがなものかと思える走り方でこちらに向かって来る主。
その表情は、憤怒だった。
「誰よアンタ!」
ついに目の前まで来た主。
勢いをそのままに、幼審神者に食ってかかる。
食ってかかられた方の幼審神者は、ぽかーんとしているだけで反応がない。
「あ、あるじっ」
ようやく追いついた一期と鶴丸はゼイゼイと息を切らしながら、それでも主を止めようと必死だった。
「うるさいわね!なんなのこのガキ!」
イライラを隠そうともせず、むしろ前面に押し出して怒鳴る様は醜いものだ。
ずかずかと詰め寄り、今にも幼審神者の胸ぐらを掴むのではないかと思うところまで手が伸びる。
しかし、その手は何か透明な「膜」に弾かれた。
「みーつけた」
そう言って、弾かれた手を彷徨わせる主を指さす幼審神者。
主を見ているはずの瞳が、どこか胡乱な眼差しで寒気がした。
「なに」を見つけたというのか。