第5章 【ワンピース✕東京喰種】ドジな俺と異世界人
相手はどう見ても15歳未満の子どもだというのに、見入ってしまった。
ついでに顔が赤くなってる気がする。
そんな俺を無視して、ごく自然な動作で耳元に口を寄せるツカサ。耳に当たる呼気がくすぐったくて、恥ずかしくて肩をすくめてしまった。
「あれ、もしかして喰種(グール)を知らないかな」
ぼそっと呟かれた言葉に、正直に何度も、首がもげそうなくらい頷く。
ただ早く離れて欲しくて。
どうやらその反応に満足したようで、胸ぐらを掴んでいた手は放され、近すぎた距離は程よく離れた。
ツカサにバレないように、こっそりと小さく溜め息を吐いて。
なんだろうこの安堵感。あー、恥ずかしかった。
熱くなった顔を両手でパタパタと扇いだ。
一連の行動を微笑ましげに見られ、いっそ穴があったら入りたいくらいだ。
羞恥に堪える姿はさぞ滑稽だったことだろう。
そうだとしても、彼女は嘲笑うこともせずに口を開いた。
「まあ、知らないよね。喰種(グール)とは人ならざる者、人喰い鬼とも言われるね」
そうして始まった説明は、お世辞にも賢いとは言えない俺の頭では到底理解出来そうになかった。
「喰種というのはね、食が人肉のみに限定された肉食の人間の亜種のことなんだ。だから普段は人間との外見的な違いはない。こんなふうにね」
ツカサは自分の右目の目尻にちょんと触れてみせた。
確かに、さっきの赤黒い目はいかにも人外っぽかった。
今はそうでもないけど。
普通の、どこにでもいる少女にしか見えない。
まじまじとツカサの顔を見ていたら、ふふっと笑われてしまった。
優雅に笑った彼女はそこらに落ちていた爪くらいの大きさの石を拾い上げ、弄びながら話し出す。
「身体能力は結構高くてね。多少差はあるけど、人間の4~7倍の筋力があると言われてるんだ。あとは、身体がとても頑丈だ」
どのくらい頑丈か、なんて説明してもらわなくてもだいたいは想像できた。
筋力が4~7倍なら頑丈さもそれくらいなんだろう。
ということは、人間相手なら無敵ということなのか。
すげぇな、おい。
考え事をしている間、余程間抜け面を晒していたようで、二人から大爆笑をいただいた。
く、くそう。
なんか悔しくて、ぐぬぬと口をへの字にする。
その様子にすら笑うツカサは、ごめんごめんと謝るが目尻には涙が見えた。