第5章 【ワンピース✕東京喰種】ドジな俺と異世界人
“「そろそろ着くよ」”
聞こえてきた返事は、落ち着いた声色だったがどこか幼さを残す声だった。
そして何故か、何かの羽ばたき。
鳥の背にでも乗ってるんだろうか。
だが鳥にしては羽ばたきの間隔が広く、もっと大きな生物じゃないだろうか。
俺の疑問などそっちのけに進んでいく会話。
いつの間にやら土産の話になっていた。
「ねー、お酒買ってきてくれたー?」
“「勿論。今回の報酬だからね」”
ふふっと笑う声の主は微笑ましそうだった。
今回の報酬?何に対しての報酬なんだ?
俺か?俺の治療の報酬か?
ぼんやりと会話を聞いていると、あとねー、と女。
おいおい、まだ何か頼むのか?
「あんたが拾ってきた男だけどさー」
“「起きたんだね」”
俺のことだった。
間髪をいれず返事が返ってくるあたり、おおよその見当がついていたんだな。
女の言葉に被せるように喋る、もどき先の相手。
言葉を遮られたことに腹を立てることなく、むしろちょっと嬉しそうな女。
いい笑顔だった。
「そうそう」
“「それは重畳。今着くから食事にしようか」”
ぶつり。そう聞こえたかと思えば、空から一頭の赤黒い巨大なドラゴンが無音で降り立つ。
あの巨体にしては羽ばたく音がほとんど聞こえなかった。
呆然とドラゴンを見ていると、目が合った気がした。
そういえば、今着くと言った女の連絡相手が見当たらない。
どこにいるんだ?
キョロキョロ辺りを見回すが、それらしき人はいない。
疑問に思い、女に聞こうと振り返れば、女は忽然と姿を消した。かと思いきや、ドラゴンの側にいた。
酒~、と言っているから余程飲兵衛とみた。
というか、近寄って大丈夫なのか...?
ドラゴンは足に括りつけ運んでいた沢山の荷物を器用に外すと、前傾姿勢になって動かなくなった。
あまりの光景に呆気にとられていると、あ、と女は呟いた。
「そーいえば自己紹介してなかったっけー?あたし、未知子」
「ミチコ?」
頷いてみせる女、もといミチコ。
なんで自己紹介だけで自慢げなんだよ。
呆れ半分でミチコを見る。
前傾姿勢のまま固まっていたドラゴンから、ぴしりとヒビが入る音がした。
ドラゴンは胸部からボロボロと霧散し、次第に一人の少女が姿を現す。
現れた少女は、何故か目尻にヒビが入っていた。
少女が閉じていた目蓋を開ければ、瞳は赤く白目のところは黒い。