第5章 【ワンピース✕東京喰種】ドジな俺と異世界人
先手必勝だと意気込んで、口を開いたところで女は盛大なため息を吐いた。
頭をガリガリと掻き毟りながら、めんどくさーいと気だるげにぽつりと言った。
え、酷い。
「起きたんならあの子に連絡しなきゃねー」
「あの子?」
誰のことだ?
馬鹿正直に首を傾げ、分かりませんアピールをする。
すると、考えていることが女に分かってもらえたようで、すぐに答えをくれた。
「そー。あんたを拾ってきた本人」
拾ってきたって...。すごい言い方だな。
微妙な顔をする俺をほっといて、女は胸元の懐中時計みたいな何かを手にとり、小さなダイヤルをまわした。
懐中時計もどき(?)はピリリピリリと音を立てる。
電伝虫みたいなヤツか?
それにしては随分と面白い形をしている。
懐中時計みたいなくせに、本来時針と分針があるはずのところには大小様々な歯車があり、きしきしと回っているだけ。
縁を飾る模様は、美しい花と古めかしい蔦。
アンティーク調なのにどこか新しい何かがある。
もどきが気になり、じーっと見つめていると逆にじーっと見つめ返された。
気になるー?と笑われた。
言葉に詰まり、何も返事できないでいると呆れたふうに肩をすくめる女。
「臓器と手足仕入れに行って、まるごと持ってくるとはねぇ」
流石にびっくりしたわーと呑気にけらけらと笑う女。
おい待て。
今何か凄くとんでもないことを言わなかったか。
ぞ、臓器?手足?仕入れるって...?
まさか人身売買!?
俺売られるところだったのか!?
想像は悪い方に流れ、女が医療用の白衣を着ていることなんて、どう見たって医者の着る白衣だってことは綺麗にすっぽ抜けていた。
真っ青になる俺を見て爆笑する女。
な、なんで笑うんだよ!
「ほら、あたし外科医だしー?」
女は、ひーひーと腹を抱えて盛大に笑いながら、ヒントというかもはや答えをくれる。
ん?外科医?
そうか!医者なら移植手術したりで必要だからか!
あ、安心した...。
胸を撫で下ろし、一息ついたところで女がおっ、と言った。
ふぉんと不思議な音がすると、懐中時計(?)からは波の音が聞こえ出した。
どうやら繋がったらしい。
「あ、もしもし?今どこにいんの?」
懐中時計(?)に向かって話してるから、やっぱり電伝虫の代わりなんだろう。
まあ、そうだとするなら初めて見た形だ。本当に面白い。