第4章 【ワンピース✕亜人】殺人鬼の娘
それも、上下左右に容赦なく揺れながら。
お、おえ、きもちわるい...。
俺が吐き気に耐えるている間に、皆の待つモビーはもうすぐそこだった。
オヤジやサッチ、他の奴らも。
皆、俺の名前を呼んでる。
ティーチと相討ち覚悟だったのに。
生きて戻れたことが嬉しくて、また涙が溢れてきた。
感動で、今自分が何に乗ってるかド忘れしてた。
俺とルフィを抱え(?)ながら走る四本腕の黒い幽霊は、スピードを落とすことなく超跳躍をしやがった。
前触れなんて一切無しに。
ぐんっと首がむち打ちになるんじゃないかと思うほどの勢いで跳躍し、モビーに跳び乗る黒い幽霊。
どうやら他の奴らには見えてないらしく、俺が浮いてると勘違いしたんだろう。大騒ぎだった。
でもオヤジとサッチは見えるみたいで、サッチなんて猛スピードで駆け寄ってきた。
「大丈夫か、エース!」
その心配そうな表情ときたら。なんか笑えた。
俺はルフィを担いで飛び降りようとしたけど、黒い幽霊がしゃがんだおかげで楽に降りれた。
ここまで来たら流石にもう安心だろ、と俺たちを逃がしてくれたレナを振り返る。
なんか俺の後ろでギャーギャー揉めてるけど知らねぇよ!
今それどころじゃねぇんだ!
俺とルフィがここに到達するまでの間、呆然と見送った海軍どもは、ハッとするなりレナに銃を向けた。
この裏切り者が、と。
「やれやれ、やっと行ったか」
その状況をものともせず、ニコニコしているレナ。
なんで笑ってられるんだよ、銃向けられてんだぞ。
俺の心境なんてなんのその。
首をぐるぐる回し、準備運動をし始めた。
何、する気だよ。
ただただ見ているしかなかった。
助けに行きたくても、安心したせいか身体が酷くダルい。本当は立っているのもしんどいくらい。
俺は不思議でならなかった。
レナは一般人のはずなんだ。
どこにでもいる普通の優しい女で、俺の好きな人。
片想いだけど、そんなことはいいんだ。
親から貰った手鏡を大事にしてて。
...俺が壊しちまったけど。
私、パパに似なかったのってよく笑ってた。
あと、嘘をつかれるのが嫌いで。
俺がプレゼントした指輪は、何も言わなくても左手の薬指につけてた。
照れくさそうに、どう?って聞いてくるような。そんな優しい女が。なんで。
あんなに歪に、綺麗に笑ってんだよ。