第4章 【ワンピース✕亜人】殺人鬼の娘
死の直前、濁っていた目は今は美しく煌めいて俺を見つめる。
血の気が引き青白くなっていた肌は血色が戻り。
さらには傷一つない。むしろツヤツヤしている気さえする。
レナは生きてる。いや、生き返った。
あまりの衝撃に涙が引っ込んだ。
それ以上に目の前の光景に自分の目と頭を疑った。
じゅわ、じゅわじゅわ。
そんな音を立てながら、レナの身体からは黒い粒子が立ち上っている。
ちょっとやそっとな量じゃない。頭のてっぺんから足の先まで。絶え間なく。
これはなんだ?レナの能力なのか?
でも、レナが能力者だなんて聞いてない。
見えているのは俺だけなのか?
信じられなかった。
サカズキに貫かれ内臓を焼かれたはずの大怪我が、みるみる治っていく光景が。
細か過ぎる黒い粒子が、ぐるぐると渦巻くように傷を治し元通りになっていく光景が。
俺は信じられない。
十秒後には完全に大穴は埋まっていた。
そこに大怪我をしていたという証拠は、今や焦げて破れた海兵の制服だけ。
レナは満足げに、制服の大穴から覗く滑らかな白い肌を撫でた。よしよし、じゃねぇよ。
おかしいだろ、なんで、どうして。
有り得ない。
愕然とレナを見ていると、レナは服についた埃を払いながら立ち上った。
その動作に違和感は一切、ない。
ある程度払い終えたレナは、俺の肩に手を置いた。
静まり返ったこの場所に、レナの声だけがこだまする。
「エース、弟くんを連れて逃げるといいよ。大丈夫、君ならできる」
レナはグッと握り拳を作ってみせた。
何を根拠にそう言われても、目の前の光景に腰が抜けて立てなかった。
俺が立てないと察したのか、うーんと首を傾げるレナ。
少し考えて閃いたらしく、テケちゃーんと間の抜けた、でも楽しそうな声で「何か」を呼んだ。
呼ばれた「何か」は、黒い粒子が大量に一箇所に集まり、四足の何かになっていく。
完全に形を成した「それ」は、全身に真っ黒な包帯(?)を巻き、下半身がなく四本腕で立っていた。
そいつは俺とルフィをその大きな手(?)でむんずと掴むと、背中らしき場所にひょいと乗せた。
唖然呆然としているうちに、腕の一つで落ちないよう押さえられ、モビーの方へ物凄くえげつない速度で走りだした。