第4章 【ワンピース✕亜人】殺人鬼の娘
皆、手を止めてその動向を見ている。
「貴様、本当に海兵か?」
サカズキの口からぽつと呟かれた疑問をレナは聞き取っていた。
答えるようにニィと悪どく笑うさまは、いつもの優しいレナとは思えないほど薄ら寒かった。
「はーずれ」
ははは、と笑っているレナ。
じゃあなんで海兵の制服なんて着てるんだよ!と問いただしてやりたかった。
だけど、失血によりレナの顔色がどんどん白くなっていく。
早く手当てを、と思う反面、もう無理だ間に合わないと思う俺がいた。
嗚呼、死んでしまうのか。
誰が?俺?
いや違う。
レナだ。レナが?
嘘だ。なんで。
風前の灯火となったレナ。
俺をかばったばっかりに。
ふと、視界がボヤけて見にくくなった。かと思えば涙が頬を伝った。ぼたぼたと。
泣くつもりなんてなかったのに。
「泣か、ないでよ。エース」
そう言うと、なけなしの力で涙を拭ってくれ、口から血を吐きながら笑ってみせるレナ。
大丈夫だよ、ってへらへら笑ってるけど、今の状態じゃ説得力ないからなっ。
「本当に大丈夫だから」
死にかけのクセにやけにハッキリ喋るレナ。
強がってんのか?実は意地っ張りだったのか?
ホントは悪魔の実の能力者で、これから回復するんだぜってパターンなのか?
期待を込めレナを見つめるけど、その目はだんだん濁っていくだけ。
死なないでくれよ...、なあ。
どんなに願ってもその時はやって来た。
不意にレナは、ふうと小さくため息を吐いた。
「また、ね」
そう言うと、目を閉じてしまった。
は?
閉じた?
死んだ、のか?
う、そだ。嘘だ、嘘だ!
いやだ!いやだ!
思わずレナを抱きしめた。
信じたくなかった。レナが死んだなんて。
まだ、身体は温かいのに。
「ーーーーッ!!」
謝るから!
お前が大切にしてた手鏡壊したこととか、くだらない嘘ついたこと謝るから!
悪かった!悪かったよ!
だから死なないでくれよ...ッ。
それに、それにっ!
「お前に、好きだって、言って、ないのに...」
「えっ、それホント?」
は?
死んだはずのレナの声が聞こえ、抱きしめていたレナの身体を離した。
空耳だと思ったんだ。でも違った。