第1章 嫉妬はスパイス(縁下力/シンデレラ)
ゆっくりと重ねられた唇。
反応を伺うように、何度も角度を変えて、触れては離れる。
それだけで興奮して、徐々に息が乱れた。
酸素を取り入れようと開いた唇の隙間から、差し込まれた舌が、歯の列をなぞって私の舌を絡めとる。
頭の中に響く水の音が厭らしく聞こえた。
しつこいくらい長く口腔内を貪られて、呼吸が繋げなくなってくる。
それが苦しくて、胸を押した。
やっと離れた唇は濡れて鈍く光っている。
それが、笑うように形を変えたと思ったら、また口を塞がれて。
やり直すように、差し込まれた舌が暴れている。
何かが、おかしい。
私の息が荒れて、苦しがっているのに止めてくれない。
力さんは、こんなに強引な事をする人じゃ無かった筈だ。
「ん、ぅっ…んっ!」
とにかく、離して貰おうと必死で胸を押す。
「…嫌?」
離してくれても、吐息が掛かる程の近くで伺うような声がした。
嫌な訳じゃないけど、苦しい。
それを伝えたくても、酸素を取り入れようと呼吸をするのが精一杯。
そんな私を見て分かってくれたのか、緩い力で抱き締められる。
「ごめんな。キツかったら、止めるから。」
耳元で、優しく落ち着いた声で囁かれて。
拒否をする気は全く無いから首を振った。