第1章 嫉妬はスパイス(縁下力/シンデレラ)
酔っているから、足元が危うくて、力さんの肩を借りてベッドへ。
「水、飲む?」
「…うん。」
優しい声に頷いたまでは良かったけど、思った以上に回っていた酔いは、水を持ってきて貰う数分すら待てず。
ベッドに倒れてしまった。
虚ろになってきた意識の中、近付いてくる足音が聞こえる。
体を起こそうとしても力が入らなかった。
「寝たか?」
声に反応して、意識はあると伝えたくて首を振る。
「そんな事したら、もっと酔いが回るだろ。」
溜め息混じりの、呆れたような声。
少しの間があって、唇に柔らかい感触。
若干冷たい、濡れた何かが隙間を這って唇を開いた。
そこから流し込まれる水分。
それを飲み込んで数秒後に、水を口移しされたのだと理解して、顔に血が集まった。
「そんな、可愛い顔されたら止まらなくなるだろ。」
酔いなのか、羞恥なのか。
どちらか分からないけど、潤んで霞んだ視界に切羽詰まったような顔が見える。
「いいよ。シても。」
そんな顔を見てしまったら拒否なんか出来なくて、腕を伸ばした。
「酔った勢いで、スる気は無かったけど…。誘ったのは、りこだからな。」
力さんが、ベッドに上がって、僅かに軋む音がする。
その音が、これからの情事を予想させて、酔いではない熱が身体を巡った。