第5章 マリッジブルー(縁下力/シンデレラ)
翌朝、仕事に出る時間は殆ど同時だったけど、見せ付けてやろうとゴミ袋を差し出す。
「今日、燃えるゴミの日だから。これだけ出して貰える?」
ゴミ出しくらいはするつもりがあるみたいで、袋を受け取ってはくれたけど。
半透明のビニールから透ける物が何かすぐに気付いたみたいで。
「…りこ、本当に良いんだな?」
昨晩と同じく、かなり低い声が聞こえてきた。
「良いも何も、社長の方には断り入れるんでしょう?だったら、カメラを入れて平気な大きな会場の資料なんか、いらないじゃない。」
「こんな事して、普通の式なら挙げて貰えると思ってるのか?」
「まるで協力してくれないなら、普通の式だってやらない方がマシ。」
「…あぁ、そう。じゃあ、これは捨てるからな。」
「えぇ、どうぞ。キャンセル料覚悟で、プランナーさんには連絡しておくから。」
顔も見ていたくないくらいになってきたから、先に家を出る。
会社までの道を歩く中で考えるのは、これからの事。
力さんの紹介で仕事させて貰ってるんだから、会社辞めなきゃならないな、とか。
この前引っ越したばかりなのに、また引っ越しをする出費が痛い、とか。
最近まであった筈の幸せな未来は全く見れず、寧ろ別れる事ばかり考えていた。