第5章 マリッジブルー(縁下力/シンデレラ)
今日も今日とて、1人でプランナーさんと打ち合わせ。
2人の式だから、自分だけで全てを決定するのは嫌で、毎度の如く資料はお持ち帰り。
だけど、やっぱり今日も、力さんは帰ってこなかった。
いい加減、ちゃんと相談に乗って欲しくて、どんなに遅くなろうが待ってようと起きている。
力さんが帰ったのは、深夜2時も過ぎた頃。
「起きてたの?」
「うん。少しくらい、ちゃんと式の話したくて。」
「ごめん。疲れてるから。オフの日にしてくれる?」
待っていた私の気持ちを汲んでくれる事は無く、会話はこれで終了。
シャワーを浴びている間も、まだ起きて待っていたのに、寝室に直行して眠ってしまった。
「ちょっと、力さん!少しくらい話聞いて!」
すぐに寝室まで追い掛けて、起こすように体を揺すったけど。
「うるさい。オフの日に聞くって言ってるだろ?」
これだけ言って、布団の中に頭を突っ込んでしまう。
何かが、頭の中で音を立てて切れた。
「誰の為の結婚式よ!力さんの仕事上、仕方無く私が付き合ってあげてんのに!」
勢いよく布団を引き剥がして、怒鳴り付ける。
こちらを向いた顔の眼は、明らかに怒っていて。
「そんな恩着せがましい言い方するなら、式なんてやらなくていいよな?明日、社長には断り入れてくるから。」
低い声が、淡々と寝室の中で響いていた。
完全に怒らせてしまったのは分かっている。
だけど、こればっかりは私が折れる訳にはいかない。
仕事を理由にすれば、何だって協力しなくていい事になってしまう。
意地になって、今まで溜め込んできた資料やら見積もりやら、全てを破いてゴミ袋に纏めておいた。