第5章 マリッジブルー(縁下力/シンデレラ)
力さんが業界人だから、ある程度は仕方の無い事だと理解はしている。
私だって、元とはいえタレントだから、顔出しNGの一般人とは、また違った扱いで。
こうなるのは、諦めなきゃいけない事なんだろう。
何の話かって?
結婚式の話です。
地味女代表みたいな人間だった私が、派手婚を望んでいる訳は無いのに…。
プロポーズも、番組の企画として放映されてしまった私達は、結婚式もバラエティーの企画にされてしまったみたいで。
ド派手な結婚式を挙げる事になってしまいました。
主役になる筈の花嫁の私が、一番乗り気でない。
なのに、力さんは今期のシンデレラの世話で忙しくて、ほぼ一人で準備をしなきゃならない。
料理の内容とか、引き出物とか、ドレスとか、装飾とか…その他諸々。
相談したくて、見積もりとか資料を持って帰って来てても…。
【社長が前祝いって、飲み会開催。ごめん。先に寝てて】
こんなメールで、いつも片付けられてしまう。
力さんが、ここまで非協力的な人だとは思わなかった。
もう何回目かも分からない前祝いの飲み会、一回くらい断って帰ってきてよ。
新居に引っ越してきて、やっと2人暮らしに慣れてきたから。
甘い生活を送りながら、2人で準備を進めていく。
そんな夢は、あっさりと砕かれていた。