第1章 嫉妬はスパイス(縁下力/シンデレラ)
手ぶらで人の家に行くのも悪いけど、行くのがあまりにも遅いと五月蝿そうだ。
「力さん、先に行ってくれる?何か手土産を買ってくるから。」
「俺が買ってくるから、りこが先に行っておいて。」
お互い、考える事は同じ。
照島さんに、質問攻めとか、絡まれるのが嫌で、譲り合いと称した押し付け合いが始まる。
最終的には、じゃんけんに負けた私が先に澤村さん宅に行く事になった。
溜め息を吐いて、インターフォンを押す。
中から、ドタドタと騒がしい足音が聞こえて、光太郎が出てきた。
この瞬間、私の中で謎が解けた。
照島さんに報告したの、光太郎に違いない。
お喋りが好きで、黙っていられない光太郎にまで、頼んでしまった私が悪かった。
後悔していても、過ぎてしまった事はどうにもならず。
「りこ!早く入れよ!」
まるで、自分の家であるかのように振る舞う光太郎に手を引かれて部屋に入った。
中には、家主の澤村さんと、照島さん、そして京治くんが居る。
空いている場所に座ろうとしたけど、照島さんと光太郎の間に無理矢理座らされた。
一番、嫌な場所である。
とにかく五月蝿い2人は、すでに飲み始めているみたいで。
「…で、お前は力ちゃんとドコまでイった訳よ?家に2人きり…で、何もサセてねぇ訳ねーべ?」
「縁下、1週間に1回は泊まりに来てんだろ?やっぱ、ヤりまくりか?」
下品な質問の集中放火を受けてしまった。