第1章 嫉妬はスパイス(縁下力/シンデレラ)
力さんが、何事も無かったかのように振り返り、私の肩を抱いて部屋の奥に戻ろうとする。
居留守を使おうと示されているのが分かって、足を一歩進めた時…。
今度は、扉を叩かれた。
「力ちゃんと一緒に居んの分かってんぞ。出て来ーいっ!」
外から聞こえる大きな声。
これで、注目を浴びたら今まで隠してきた事が無駄になる。
諦めて、扉の鍵を開けた。
「ウェーイ!久し振りだな!地味子!」
「…お久し振りです。ここでは、お話したくないので、中にどうぞ。」
相変わらずのハイテンションで、私を見るなり失礼な事を言い出す社長。
玄関で騒がれても迷惑だから、部屋に上げてしまおうとしたけど、首を振られた。
そのまま、隣の部屋を示すように動かされる視線。
「澤村ちゃん家で、飲み会!お前等、強制参加な!」
それだけ言って、自分だけさっさと隣の家…澤村さんの部屋に行ってしまった。
「力さん、社長に何か言いました?」
「俺は、何も。騒がれたくないりこの気持ちは分かるから、報告してないよ。」
一瞬会っただけなのに、ドッと疲れが押し寄せてくる。
どこから漏れたかは分からないけど、2人きりで家に居るような仲だと知られてしまっているみたいだったから、今後の為にも従うしか無かった。