第4章 責任感(田中龍之介/単発)
2人で取り残されると冗談にして流す事も出来ず、急激に恥ずかしくなって手を振り払う。
そんな事をしても、反応の無い田中が気になって顔を覗いた。
「…ばっ!近ぇよ!」
目が合ってから数秒。
変な間をあってから顔を逸らされる。
田中の顔が真っ赤だ。
それで、更に意識してしまって私まで顔に血が昇った。
そのまま、2人してテンパった会話をする事になると思ってたけど。
「潔子さんっ!スンマセン!」
何故か、この場には居ない人に田中が謝って、自らの顔を叩いている。
意味不明な行動に、こっちの熱は冷めて、帰ろうと歩き始めた。
後ろから聞こえてくる足音。
腕を掴まれて、すぐに前に進めなくなる。
「田中、帰るよ。もう、真っ暗じゃ…ん?」
離して貰おうと振り返った時、目に入ったのは真剣な顔。
試合中にしか、お目にかかる事が出来ない表情。
不覚にも心臓が跳ねてしまった。
「…お、お願いシァスッ!」
田中の口から紡ぎ出された言葉は、相変わらず威勢が良くて。
しかも、色々言うべき事をすっ飛ばしていて。
答えるより先に、笑いが起きてしまう。
「なっ!テメェ、笑うな!」
「だ、だって。…ふふっ!何をお願いしますなのか…分かんなっ…。」
怒鳴られても笑いが止まらず、途切れながら返した。
「この状況で、告白以外に何があるってんだよ!?」
今さっき、他の女性の名前を出したばかりで、どうやってそれを理解しろと言うのだ。
だけど、ドキドキしてしまったのは事実で。
気の迷いだったとしても、付き合ってみたいと思ってしまった。
「こちらこそ、お願いします。」
自然と了解の返事が口から零れる。
それを聞いて、田中が奇声を上げたのは言うまでもない事だった。