第1章 嫉妬はスパイス(縁下力/シンデレラ)
私達のデートは、家で2人でいるだけの時が多い。
私は元タレントだし、所属していた事務所の人間と、なんて週刊誌に騒がれたくも無かったから。
結婚になったら話は別だけど、現在はまだお付き合いを始めたばかりの段階で、周囲に何か言われるのは嫌だ。
でも、これには近所の人の協力が不可欠で、同じマンションに住む澤村さんだとか、光太郎にお願いしていた。
力さんは2人の友人で、私に会いに来ている訳じゃない、と…。
幸い、私の部屋は角部屋で、隣は澤村さん。
マンションの他の住人には気付かれず、なんとか過ごしていた、ある日。
力さんが家に来ていて、いつも通りのまったりモードで寛いでいた時に、インターフォンが音を立てる。
デート中に来客なんて、ついてないな、と思いながら玄関に向かった。
ドアスコープから、外を覗く。
そこに居たのは、信じられない人で固まってしまった。
「誰が来たんだ?」
「…しゃ、社長が…。」
後ろから力さんの声がして、ガチガチのまま振り返る。
答えようとした声が、緊張を表すように裏返った。
「社長?田中なら、何か急用じゃないのか?」
「ち、違くて…。て、照島さんの、方…。」
扉を開けようと、私の横を通り抜けた力さん。
それを止めるように腕を掴んで、名前で来客が誰かを教えた。