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【HQ】脳内妄想‐シンデレラ・単発‐【R18】

第3章 祭りの夜に(黒尾鉄朗/単発)


私を見下ろす眼は、怒っているような、呆れているような。
そんな顔をしている理由は、すぐに判明した。

「戻るなら連絡くらいしなサイ。心配するだろ?」

ただ、保護者ぶった顔をしたいだけだ。

間違っても、私だから心配してくれた訳じゃないって分かってるのに。
私の為に、戻って来てくれたのは嬉しい。

「ごめんなさい。ちょっと、人混みに酔っちゃって…。」
「それなら、尚更連絡しろ。女のコ、1人で夜道歩かせる訳にいかねぇんだから。」

素直に謝っても、許してはくれないようだ。
まるで、子どもに向けるような事を言われて続けている。
折角の、2人きりなのに、ただ怒られてるだけなんて嫌で。

「女の子を1人にしておけないなら、お祭りに戻って下さいよ。あのマネージャーさん、1人になっちゃいますよ?」

説教を止めたくて、思っても無かった言葉が口から出た。

「…ふーん?大熊は、それで良いんだな?」

不愉快そうに眉を寄せた顔。
それは、すぐに背を向けられて見えなくなった。

良くない、と言って引き止めたいのに声が出てこない。
1歩ずつ、ゆっくりと黒尾さんが遠くなっていく。

「…俺は、大熊と祭り回りたかったなァ?その為に、あの女、撒いたんだけど?」

少し離れて止まった黒尾さんの足。
軽く振り返って見せてきたのは、口角を上げた笑顔。

私の気持ちを知っていて、からかってるんだろうか。
それでも、今の言葉に乗ってしまいたい。

近付くように、1歩踏み出す。

「良くない…です。私、黒尾さんと一緒に、居たい。」

引き止めるように、伸ばした手は、体ごと完全に振り返った黒尾さんに掴まれて、指先を絡められる。
恥ずかしいのに、振り払うなんて勿体無くて、手を引かれるまま隣を歩いた。
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