第3章 祭りの夜に(黒尾鉄朗/単発)
いやいや、黒尾さんが私だけを誘ってくるなんて有り得ない。
それは、流石に都合良く考えすぎだ。
そう思って、他の同行者を聞いてみたけど。
「…何?お前、俺と2人は嫌なの?」
やっぱり、デートはデートだった。
「そんな事ないです!準備してくるので、ちょっと待ってて下さいっ!」
食い気味に返事をして、マネージャーが泊まる用の部屋に戻った。
可愛い服なんか持ってきてないけど、汗臭い今の格好だけは嫌だ。
手早く着替えて、黒尾さんの元へと急いだ。
「…俺は、ウチのと行くからさ。他当たってくんね?」
「いーじゃない。お祭りは、皆で行った方が楽しいし。」
その場に近付くと、聞こえてきた声。
さっきのマネージャーさんが、黒尾さんを誘っているらしい。
断ってくれているから大丈夫だと思って、声は掛けずに待っていた。
私に、先に気付いたのはマネージャーさんの方で、何故か満面の笑みを浮かべて近寄ってくる。
「ね、アンタからも言ってやってよ。お祭りは、人数多い方が楽しいって。」
強制するような怖い視線を向けられて、従うしかない。
「やっぱり、2人で行くのは良くないですよ。周りにも勘違いされちゃいますから。」
勘違いされても良いから2人で行きたい。
黒尾さんも、そう思ってくれたら嬉しい。
だから、こういう言い回しをしたのに。
「…じゃ、他の奴等も誘うか。」
黒尾さんは、あっさりと了解して。
たまたま通り掛かった他校の部員を引き連れて、お祭りに行く事になった。