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【実況者】短編集【色々】

第3章 かわいいヒーロー/hr


「わ、わたし、そこにいる大好きな彼氏さんと待ち合わせしてたんです! だからっ、離してください!!」

 私は必死で叫んだ。が、何故か腰に回された手は未だに離れない。それでもしつこく男たちは「あんなつまんなそうな彼氏なんて放っといて」とか「俺らと遊んだ方が絶対楽しいよ」なんて言ってくる。けれど、彼にはちゃんと伝わったみたい。

「おい。俺の大ッ好きな彼女さんから離れろって言ってんだけど、聞こえてないのかお前ら」

 ヒラさんが正面に立ち塞がる男の肩を強く掴む。男は煩わしげに振り返り、彼の胸倉を掴みあげると、右手の拳を大きく振りかぶった。

「ッるせえな、テメー。さっさと失せろ、じゃねえと痛い目見るぞ」
「わあ〜、なにそれ、脅しのつもり? 迫力も怖さもちっとも足りないねえ」

 挑発するようにニタァと悪い笑みを浮かべる彼。まんまと逆上した男が、振りかぶった右手を彼の顔面に向かって振り下ろす。──が。
 それはあまりに一瞬だった。彼は鮮やかな手捌きで男の拳を交わしたかと思えば、いつの間にか男の胸倉を掴み返しており、彼の手に捕まった男はバシンッと背中から床に叩きつけられていた。彼より10cm以上は背が高いであろう男は仰向けで床に転がされて、何が起こったかわからない、という顔で呆然としている。私も同じように驚いてしまった。

「……あ、やっべ。正当防衛とは言え、投げちゃった」

 はっ! そういえば。ヒラさんって、空手経験者でしたっけ……!?
 こーすけさんから聞いたことがある、彼奴ああ見えて結構強かったんだよー、なんて何故かこーすけさんが胸を張って自慢気に話していた。

「夢子ちゃん、おいで!」

 呆然と立ち尽くしていた私は、彼の声ではっと我に帰る。先程の驚きで力の緩まった男たちの手を振り払い、差し伸べられた彼の手を取った。ふたりでその場から脱兎の如く逃げ出した。


 
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