第2章 可愛い子ほど甘やかしたい/ky
「ふ、ぇっ、」
キスされたのだ。そう理解した瞬間、我ながら間抜けな声が出て、全身の熱が集まったかと思うほど顔が熱くなった。
彼は恍惚とした表情を一変、いつものように眩しい笑顔でケラケラ笑っている。
「あははッ、顔真っ赤にしちゃってえ、夢子ちゃんは可愛いなァ〜?」
さっきの私の言葉をオウム返しされてしまった。ううう。
「き、きよくんのばかあっ」
「フフン、俺をガキ扱いした罰だっての。その様子じゃ、まだまだ反省していないようだなァ、もっかいお仕置きが必要か? んん〜?」
「ばっ、ばか! えっち!!」
「ちゅーぐらい良いだろお、別に」
もう俺たち恋人なんだから。
ニッ、と歯を見せて笑う彼はあまりにも無邪気で、私だって本音は嬉しくてもっとして欲しくて、何にも言えなくなる。
私の頭に添えられていた手がするりと頬を顎をゆっくり撫でるものだから、ああ、もう、ここは私のお家だから良いや! 誰も見てない、ふたりきりだもん!! って、静かに受け入れるように目を瞑ってしまった。
──が、いくら待っても何も起こらない。彼の手が私の顎の下をこしょこしょと猫を甘やかすように撫でて、少し擽ったい。笑いを堪えながら片目を開けると、彼はニヤニヤ笑っているだけだ。あれ。
「……ちゅー、しないの?」
「ンだよ、して欲しかったのか? いやあ、急に目え瞑って何事かと思ったぜ〜、夢子ちゃんも案外えっちだナァ〜?」
「うッ」
嘘つき、キス待ちしてたの分かってた癖に。もおー! 嵌められたー!
「ンじゃ、ご希望通り〜♪」
だけど、ちゃんと二度目の口付けもしてくれて、嗚呼、その優しい触れ方に少しの意地悪も許してしまう。気まぐれで悪戯っ子で、もう、ほんと、猫みたい。
「……なあ。もーっと、えっちなこと、シたくなってきたんだけど」
「にゃッ!?」
びっくりし過ぎて私の方が猫みたいな声を出してしまった。彼の甘えるような眼差しに捉われて、心臓が痛いほど早鐘を打ち始める。