第2章 可愛い子ほど甘やかしたい/ky
私は一度台所へ向かって、彼の好きな緑茶とお菓子をコタツに持って来てから、また彼の隣にストンと腰掛けた。そわそわしていた彼の動きがぴたりと止まる。また変に思って彼の顔を覗き込んだら「なんだよ」とその眉間に皺が寄った。少し、頬が赤い。
まさか、とは思うけど──
「もしかして、緊張してる?」
──なーんて、私は自分の冗談をクスクス笑った、が。
「ゔッ、」
……あれ? 図星、なんです?
彼の顔はみるみる真っ赤に染まっていき、私の目線から逃れるようにプイッとそっぽを向いてしまった。
「そ、そりゃあ、おまえ、さ……す、好きな、女の、家に上がるとか、……緊張するだろ、バカ」
こちらに後頭部を見せたままボソボソ吐き出された言葉に、きゅん、と心臓が震えた。
なんて可愛いひとだろう。私は堪えきれずに声を上げて笑ってしまった。ムスッと口を尖らせた彼が少しこちらを見る。鋭い目でキッと睨まれたけれど、そんな林檎みたいな顔をされていては可愛いだけです。
ついつい自然と手が伸びて、彼の赤い後ろ毛をわしわし撫でてしまう。
「あははっ、顔真っ赤にしちゃって、キヨ少年は可愛いね〜?」
「バっ、カ、や、やめろ、ガキ扱いすんなよっ」
口では抵抗するものの彼の顔はニヤけて、私の手を振り払う気配もない。が、彼の両手もぬっと私の頭へ伸びてきた。
「くそ〜、仕返しだオラァ!」
「きゃあ〜っ」
彼は両手でわしゃわしゃと乱すように私の髪を撫で回し始めた。私も負けじと彼の髪をもふもふし返す。そんな戯れが楽しくて楽しくて。
「あっ」
不意に、何か良いことを思いついた、と言わんばかりの彼の声。もっと戯れていたかったのに、急に彼の手が止まる。彼はニンマリと笑った。
どうしたの、とは聞けなかった。顔の距離は一瞬で縮まった。開きかけた私の口に、ふに、と柔らかいものが触れて。それが彼の唇であることに気付いた時にはもう離れていて、私の頭に両手を添えたまま、うっとり微笑む彼の顔が至近距離にあった。