第9章 いつぞやの会話-邂逅編-
もぐもぐもぐ
(よく食うなぁ)
ごくごくごく
(ピッチも上げまくりだぜ)
「これおかわり!あとこれも!」
(いやいいけどさ。太るんじゃないか?流石に)
ダンッッッ!!!
(これはそろそろ…)
「……ほんっと、変態!」
(始まったぜ)
「あんな……」
「あぁ、アレな。ぶちゅう~ってやつだろ?」
「ゲルガー!!!」
「おま、声でかいって。落ち着けよ」
「だって!」
「まぁまぁ、ほら座れ。な?」
「…あんな…」
(思い出してるな、あの時の事)
「…馬鹿…」
(まぁ確かにさ、わからないでもないけどよ)
「…変態…」
(でもなぁ…。せめて話位はした方がいいと思うぜ、俺は)
「……、ゲルガー食べないの?」
「ん?あぁ、大丈夫だ。食ってるよ」
「油断してると、それ全部食べちゃうから!」ぱくっ
「おう、食え食え」
「お酒だって、全部飲んじゃうから!」ぐびっ
「おう、飲め飲め」
「これ、もう一つおかわり!」
「…ここさ、いつ来ても美味いよな」
「うん」もぐもぐ
「いい店教えてもらったな」
「でしょ?」ごくごく
「お前さ、この店を教えてくれた時…何て言ったか覚えてるか?」
「安くて美味しい!」
「あぁ。看板に偽り無しだぜ。でも、他にもあるだろ?」
「それは…」
「ナナバ?」
「……」
「おいおい、忘れたのか?」
「…、忘れて、ない…」
「だよな。あんなに嬉しそうだったもんな」
「嬉しそうなんて、そんな事…!」
「ないとは言わせないぜ。何しろ俺は、しっかり覚えてるからな」
「…っ」
「あ~、確か『エルヴィンに教えたら凄く喜んでくれて』だったか」
「…あ、あれは…」
「んで『だからゲルガーにも教えたくて』だったな」
「……」
「いやぁ、ごちそうさんだよ」
「どういう、意味…」
「見せつけてくれて、ってな。なぁ、何で毎回ここなんだよ?」
「だから、安くて美味しいから」
「それだけか?」
「……」
「なぁ、本当にそれだけか?」
「……」
(待ってんだろ?)
カラン カラン
(気付けばお前、無意識に扉の方ばっか見てるじゃねぇか)
「…あ」
「おぉ、すげぇ。偶然ってなもんは」
「エルヴィン…」
「あ、仕事残ってたんだった~。俺帰るわ~(後は任せるぜ、団長)
fin