第10章 いつぞやの会話-融解編-
「え…帰るの?」
「おやすみ。ゲルガー」
「ぁ…」
「……」
「……」
「ナナバ」
「えと、その…」
「帰ろう?」
こくん
「よかった…」
カラン カラン
「……」
「…ナナバ」
「……」
「本当にすまなかった」
「……」
「君の嫌がる事はすまいと、そう頭ではわかっているのに」
「……」
「許してくれ、とは簡単に言えないが」
「…嫌じゃ、ない」
「そうか」
「…恥ずか、しい」
「あぁ、そうだね。本当にすまなかった」
「あんなに、人が沢山…」
「……」
「エルヴィンは慣れてるだろうけど!私は…」
「……」
「…私は」
「……」
「ひっく…ぐす…」
「ナナバ…本当にすまない…」
「…っ、エルヴィンの、馬鹿」
「君を独占したい」
「そんなの、もうとっくに」
「勿論だ。君は俺のもの」
「…ん」
「そして、俺は君のもの」
「エルヴィン…」
「すまない、どうしてもそれを見せつけたくなってしまったんだ」
「そんな事しなくても、大丈夫なのに」
「あぁ、それも分かっている。分かってはいるが…」
「エルヴィン…」
(君は気付いていないのか。どれだけの男が君に夢中になっているのかを)
「エルヴィン…?」
(しかもあの時、目の前には彼がいた。見過ごせるわけがない)
「…やっぱり怒ってる?」
「まさか」
「難しい顔してた」
「そうか、すまない。……君には迷惑ばかり掛けているなと思ってね」
「…そんな事…」
「…少し、距離を置こうか」
「そんな事しなくていい!!!」
「ナナバ?」
「っ、ごめん、大きな声出して」
「いや、それはいいんだが…。ではまだ嫌われてはいないと、そう思っても…?」
「…なら、ない」
「……」
「嫌いになんて、ならない」
「ナナバ…」
「だから、何処にもいかないで。側にいて」
「……」
「自分から避けておいて、勝手な事言ってるのはわかってる。でもっ」
「勝手じゃないさ。可愛いお願いだよ」
「それから、その、恥ずかしいから…ああいうのは…」
「二人の時だけで、だね」
「うん…」
「ナナバ…、私をまだ君の隣に…、おいてくれるかな…?」
「当然だよ。エルヴィンなんだから」
「…ありがとう」
fin