第8章 いつぞやの会話-光明編-
「はぁ……」
「あの、団長、何かあったんすか?大丈夫ですか?」
「あぁ、ゲルガーか…。実は…いや、大丈夫だ。何もない、何も…」
(アレだろ、きっと)
「はぁ……」
「…ナナバ、ですか?」
ぴくっ
(ほらな)
「わかるのか…?」
「いや、まぁ、それなりに付き合い長いんで」
「そうか、そうだな。班も同じだ。わかって当然だな…」
(アイツとは勿論、団長ともそれなりの付き合いなんだぜ?今の口ぶりだと自分はいれてないっぽいけどさ)
「……」
(あ~、ほらまたそんな顔…。流石に俺だって心配するっての)
「ナナバを怒らせてしまったんだ…」
「そうすか(そんなこったろうと思ったぜ)
「もう一ヶ月近く、まともに口を聞いてくれなくてな…」
(な、長ぇ…結構ガンコだからなぁ)
「最低限、仕事に支障がでないようにはしてくれているが」
(アイツらしい)
「正直どうしたらいいのか…、切っ掛けがつかめないんだ」
「ナナバと飯行ってきました、二人で」
「…何?」
「つか、この一月で何度か行ってます。誘われて」
「そうか」
「今日も行きます」
「…ゲルガー」
「何でしょう」
「彼女を宜しく頼む」
「……(何言ってんだよ、この人)
「もし、別れたい、と言うなら」
「同じなんだ…」
「…?」
「毎回、同じ店に行くんですよ。あそこの角曲がったとこの」
「!」
「心当たり、あるんじゃないすか?」
「あぁ…。いつだったか、二人で行った。一度きりだが」
「アイツ言いたいこと言いますけど、団長を悪く言った事ないんですよ」
「……」
「でまぁ、それが俺には惚気に聞こえる訳で」
「……」
「正直困ってます。俺、独り身じゃないですか。だからハイハイって聞くだけしかできなくて」
「……」
「そうやってると『真面目に聞いてるのか』って怒りだして」
「……」
「最終的には『エルヴィンはちゃんと聞いてくれるのに』ってまた振り出しで」
「……」
「それが毎回毎回、繰り返しで。アイツ飽きねぇのかな」
「…すまないな」
「ほんとですよ」
「……」
「だから今晩は、迎えにきてやってくれませんか」
「…!」
「今日もまたあの店です。待ってますんで」
「あぁ、わかった」
(…待ってます、アイツが)
fin