第12章 全身ラジオ〜新婚さんの話〜
【結婚専門情報誌の話】
「……にしても、今年は初っ端から本当に色んなことあったなー、やっと1年の半分終わったところなのに怒涛過ぎた」
「レトさんはマジで怒涛だったね。武道館終えた後は"今年はもう何にも無いと思う"なんて言ってた癖によォ」
「ねぇー。数ヶ月前の自分を指差して笑ってやりたいわ。でも、もうさすがにこの後は何も無いよ、平和に穏やかに結婚生活充実させるわ」
「いやいや、何もないわけないでしょ、寧ろこれからあるんでしょ。結婚式とか、新婚旅行とかさ」
「あー、そうだねえ、ただいま絶賛計画中です」
「良いなあ、良いなあ! すっげえ楽しそうだなあ!!」
「ふへへ、ほんま相談してる間もめっちゃ楽しいわ」
「クッソ羨ましい」
「ゼ◯シィふたりで買いに行ったもん。本屋の店員さんに微笑ましい顔で見送られてやたら恥ずかしかったわ。あ、キヨくん知ってる? や、知らんよなあ。アレめちゃめちゃ分厚いし重いんだよ、下手したら鈍器になるよ、すごいよ」
「その雑誌の角で頭ぶん殴ってやりたい」
「やめて」
「レトさんの口からゼク◯ィなんて言葉が出て来る衝撃すげえな……」
「失礼だな。俺だって時が来たらそういう雑誌も手に取るよ、プロポーズされたらゼ◯シィ! は、もはや日本人の常識やろ」
「すげえゼク◯ィ推してくるじゃん」
「いやね、あの雑誌、意外と面白くてさ。内容も心理テストとか先輩夫婦の失敗談とか色々載っててなかなかだけど、特に付録がね」
「へえ、付録なんか付いてんだ」
「うん。手作り出来る双六が入ってた」
「は?」
「双六」
「結婚専門の情報誌に、すごろく」
「ゴールの"ベッドでマッサージしてもらえる権利♡"を目指してプレイする、ほんとにただのふたり用双六なんだけど」
「ゴールしたご褒美の内容がもはやただのスケベ」
「でね、道中のマスに書いてある内容も凄かったんだよね。"ふたりのファーストキッスを再現♡ 5つ戻る"とか、"目を瞑ってもらって相手の体の好きなところにタッチ♡ もう一度サイコロを振る"とか、」
「ンで、そのスケベ双六、嫁さんとふたりで遊んだりしたの?」
「…………遊びました。」
「ウッワァ」