第12章 全身ラジオ〜新婚さんの話〜

　
【結婚バレの話】


「あのさァ」
「うん」
「めっちゃ気になってることがさー、あるンだけどさァ」
「なんかこの始まり方、久しぶりだね」
「うるせえよ、アンタが色々あったせいだろうが。この入院鼻声バカ」
「その件に関しましては本当に申し訳ございません」
「まあ、それに関しては前回話したからもう良いんだよ」
「え、じゃあ何」
「……レトさんさァ、結婚したこと即バレしたよね」
「あ、はい」
「１ヶ月でバレたね」
「バレた。浮かれてた。指輪付けっ放しで実写動画撮ってそのまま普通に投稿してた。ツイッターでちょっとした騒ぎになった。ビビってすぐさま生放送した」
「何故か俺も巻き込まれてビビったわ」
「さすが巻き込まれキング」
「マジで何で俺まで結婚の噂立ったんだよ、意味わかんねえよ、俺だってなんまら可愛い彼女と今すぐ結婚してえわ。ちくしょう」
「あっ……なんか、ごめんやで……俺まで既婚実況者の仲間入りをしてしまって……」
「やめろやめろォ！　まるで可哀想なひとを慰めるような優しい声出すんじゃねえ！！」
「来世では結婚出来るとええな……」
「今世で結婚しますううう！！！！」
「あっはは！　いやー、別にね？　結婚したこと隠すつもりはなくて、ちゃんと皆様にご報告する予定ではあったんだよ。でも今すぐ言ってしまうより、実況初めて十周年記念の時とかに＂実は今年、結婚しましたー！＂ってご報告出来た方が、かっこいいかなあと思って」
「レトさんってカッコつけようとすると絶対失敗するよね」
「うん。俺たぶんそういう星の下に産まれてきてる」
「ま、変に気を使う心配も無くなって良かったじゃん」
「そうなんだよねえ、凄い楽になった。おかげさまで、随分前に上げたゲーセン動画が急にえらい視聴回数伸びて、高評価もたくさん頂けました」
「ああ、もはやハナさんとのラブラブデート動画になってた、アレか」
「ソレです。公開当時はちょーっと、不穏なコメントも頂いたけど、今では結婚を祝って下さるコメントに溢れてて、いやあ、お恥ずかしくも嬉しい話です。ほんまありがとうございます。えへへ〜」
「くッそォ、幸せいっぱいじゃねえか、腹立つ」
「何でや、心の底から祝ってよ」