• テキストサイズ

【実況者】蟹の好きな花【rtrt夢】

第10章 近くて遠い、あと一歩


 

「ここであってんのかなあ……」

 展覧会の開催当日。地下鉄を乗り継いでやって来たとある商店街、その一角に立つ洒落た雰囲気の真っ白なビルを目の前に、俺はぽけーっと立ち尽くしていた。
 彼女から貰った葉書によれば、場所はここで間違いない。入り口の手前に展覧会開催の看板も出ているし、そこには彼女の名前もある。一階はふわふわのパンケーキが売りのカフェになっており、二階と三階が貸しギャラリーになっているようだ。うう、朝早くから女性客ばかりカフェスペースできゃっきゃ盛り上がっていて、正直めっちゃ入りにくい。いちおう、普段より小綺麗な格好してきた(自分で服選んだら「クソだせえ」言われたからキヨくんにコーディネートしてもらった)けど、変に緊張してしまう。
 何でやろね、自分はただのお客さんで、自分の作品が見られるわけではないのに。彼女も、俺がキヨくんたちと開催したゲーム実況のイベントを見に来る時、こんなそわそわした気持ちだったりしたんかな。
 彼女の実家のお花屋さんで買った出展祝いの花束と、ジャケットのポケットに忍ばせた小さな白い箱の存在を指先で確認してから、俺は覚悟を決めて入り口へ向き直る。

「……よし、行くか」

 勇気を振り絞り、一歩、踏み出した。

 俺は今日、彼女と上手くふたりきりになれたタイミングで、プロポーズしようと考えている。
 この日の為に、既婚者であるガッチマンや牛沢にも恥ずかしながら色々相談に乗ってもらって、何日も悩んで揃いの指輪を購入した。
 小さな頃から絵を描くことが好きだった彼女へ、展覧会を開くまでになった尊敬とお祝いの気持ちも込めて、俺の今後の人生と共に指輪を贈りたいと思う。
 上手く渡せるか自信はないけど、受け取ってくれない、なんてことはない筈。たぶん。きっと。だ、だいじょうぶ。……これで万が一にも断られたら、俺、今後生きていけないかも。
 久しぶりに彼女がそばに居ない日々を1ヶ月近く過ごしてみて、改めてわかった。俺は、彼女がそばに居てくれなければ生きていけない、と。だから今日、絶対にプロポーズしてみせる!

 あっ今なんか失敗フラグ立ったような気がする!! 気のせいかな!?
 
/ 93ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp