第8章 嫉妬も愛情表現です
「あははははッ、レトさん何その反応!? 女に慣れてなさ過ぎだろ、童貞かよ」
「ぶっ、ふふふっ、レトさんピュアですねェ〜! 思春期の中学生かな!?」
「もおお! 君らうっさい!!」
童貞ちゃうわボケェ!! ……なんて、女性店員さんもハナちゃんも居る前では言い張れる訳もなく、ただただ、中学生の頃から全く異性慣れ出来ていない自分を恥じるばかりです。くそう。
どうしてか昔から、ハナちゃん以外の女性には関心が持てないどころか、あまり距離を縮められるとビビってしまう癖がある。助平心でドキドキする、というより、怖くて心臓が跳ね上がる。二次元の住人なら可愛いと思えるのに。もはや異性が苦手過ぎて、ハナちゃんと出会えなかったらマジで俺は魔法使いになっていたのではないか、とすら思う。
そんな俺が唯一愛する女性であるハナちゃんの方を見ると、彼女は全く何事も無かったかのように、店員さんの横でクレーンゲームの中を撮影していた。俺が頼まずとも、しっかりカメラマンの仕事を進めてくれている。ほんまに真面目なええ子やわ。──だけど、もう少し別の反応があっても良いのではないか、と思ってしまう俺は、いったい彼女に何を求めているのだろう。
いや、今はそんなことよりゲームの結果が重要だ。店員さんはゲーム機の窓を開けて少し悩んだ末、落とし口に引っかかったぬいぐるみをチョンチョンと軽く揺らして、下の取り出し口へ落としてくれた。あ、やったー!!
「よっしゃー! 店員さん判定により、今回のクレーンゲーム対決は俺の大勝利ーッ!! いえーいっ!!」
キヨくんとフジくんはわざとらしく不貞腐れて「ずるい」だの「不正」だの文句言ってたけど、所詮は負け犬の遠吠えというやつだ。店員さんにはめちゃくちゃお礼を言った。
何にせよ、勝ちは勝ちである!
「ハナちゃんっ、ほら俺の勇姿ばっちり撮って! 褒めて褒めて!!」
俺はドヤ顔で勝ち取ったぬいぐるみをカメラ──いや寧ろ彼女に見せ付ける。撮影中はあまり喋らないという約束なので、返事は無かったけれど、彼女は微笑みながら俺の頭をよしよしと撫でて、控えめなお祝いをしてくれた。ウッ、やさしい。すき。控えめに言って結婚したい。
このぬいぐるみはあとで、俺専属の優秀なカメラマンさんに捧げよう。今日の記念と、お礼を兼ねて。