第8章 嫉妬も愛情表現です
「でも、やっぱり菜花ちゃんがおらんよう振る舞うなんて難しいから、幼馴染みが撮影してくれてます、ってことぐらいは言ってもええかな」
「うん、大丈夫。その方が、私も気が楽かも。だって絶対笑っちゃうもん、後から視聴者さんたちに『えっ何か女の笑い声がする!?』って怖がられちゃったら大変です」
「せやね。あ、あと、撮影中はキヨくんたちみたいに、ハナちゃんって呼ぶから。それだけで、だいぶやり易くなると思う」
「なんだか、擽ったくなりますね?」
「へへ、ちょっとね」
「あ、それなら、私もレトさんって呼んだ方がいいかな」
「そ、そこはルトくんでええよぉ」
同じ実況仲間からレトさん呼びされるのは構わないし、結構気に入ってるあだ名だけど、恋人からその呼び方をされるのは、背中が変にそわそわしてしまう。
コホン、と小さく咳払いをして、改めて彼女の向けるカメラと向き合う。3、2、1の合図で、自分に今度こそスイッチを入れた。
「はあい、こんにちわーっ! 今日は世界一のゲームセンターに来ておりまーす。撮影は幼馴染みのハナちゃんにお願いしてます、今日も可愛いですー」
ああ、俺の紹介に合わせて画面内に控えめなピースサインを入れてくれる彼女は、やっぱり可愛い。
よし、今度こそ上手くいきそうだ!
……あ、こんちゃースイッチはまた入れ忘れましたけども。