第8章 嫉妬も愛情表現です
さて、ゲームセンターの店長さんに改めて撮影許可下さったお礼をしてきたことだし、さっそく遊ぼ、いやいや撮影しよう!
キヨくんたちはお店の外でまずオープニングを撮りたいというので、俺はカメラマンの彼女と一足先に店内へ。
クレーンゲームの台数は世界一! なんて謳うだけあって、広い店内にすんごい色んな種類と数の機体が並んでいる。有難いことに開店前から入店させて頂いてるから、俺たちの他に客はまだ居ない為、もはや貸切状態。自然にテンションも上がるというものだ。
とりあえず撮影しながら店内を一度グルッと見て回ろう、その途中に面白そうなものがあったらやってみよう、と言うことで、彼女に持参してきたビデオカメラをお願いする。
「あっ、ちょっと待ってねー」
彼女はレトルトくんの缶バッジをつけたショルダーバッグから、俺にくれた白黒マスクと全く同じものを取り出した。
「えっ! それ、二つあったの!?」
「あ、これはね、失敗作なの。お鼻のとこのワイヤー入れ忘れちゃったり、レトルトくんのお口の位置がずれちゃってて。でも捨てるのは勿体無い気がして、残してあったんです。まあ、私が付けるなら少し不恰好でも問題無いかなあって、持って来たの」
いやいやいや、どこがどう失敗作なのか、俺には全くわからない出来栄えなんですけど。
白黒マスクを装着して、更に四角い黒縁の伊達眼鏡を掛けた彼女。眼鏡の縁に両手を添えながら、上目遣いにこてんと首を軽く傾げる。
「どう、かな? 普段のルトくんの真似してみたんです、けど……似合う?」
は? もはや愚問すぎる。
「めっちゃ可愛い好き」
「えっ」
「お揃い最高です」
「あ、ありがとうっ」
大きなおめめをふんにゃり三日月にして笑う彼女は、もう本当に本当に可愛くて、一瞬、撮影やめてこのままゲーセンデートに切り替えようかと思うほどでした。