第8章 嫉妬も愛情表現です
翌朝、俺と彼女は約束の時間通りに目的のゲームセンターへ着いて、キヨくんたちも珍しくその数分後に姿を現した。いつもは30分ぐらい平気で遅れてくるのに。
「あっ、ハナさ〜ん、おはよ〜」
「ハナさあん!! お久しぶりです!」
「ちょっと、俺には挨拶無いの、ねえ」
おはようございます、と丁寧な挨拶で彼らを出迎える彼女に、キヨくんとフジくんも元気いっぱい挨拶を返していた。一方、俺の存在は完全に無視されている。ひどい。
昨夜のメッセージでも、彼女がカメラマンとして同行することについて伝えたら、彼らはやたら大はしゃぎで喜んでいたけど。菜花ちゃんは彼らのことをお姉さん、いや、お母さんみたいに可愛がっているから、懐かれても無理はないか。
「フジくんとお会いするのは、本当にお久しぶりですね。あ、この間の、粘土で何かを作る動画、面白かったですよ!」
「おっ、アレ見てくれたんすか、嬉しい〜! そうだ、今度ちょっと良い絵の具買おうと思ってるんすけど、ハナさんのオススメってなんかあります? 良かったらまた一緒に画材屋巡りとか……あ痛ッ!?」
とりあえず彼女の手を自然と握り締めてるフジくんの手は、ベチンッと叩き落としておいた。
「レトさん急に何すんの!?」
「そりゃあ自分の可愛い恋人に軽々しく触れられたら怒るわ、アホ。しかも何デート誘ってんねん」
「やだわあ、もお、嫉妬深い男は怖いわねえ、キヨ子さん」
「ほんとよねえ、フジ子さん。これだからヤンデレ蟹男は。もうッ、嫌んなっちゃうわ!」
何でフジくんもキヨくんもいきなりおカマ口調なんの。意味わからん。
彼女の前に立ちはだかって二人を睨み上げていたら、キヨくんに「蟹じゃなくて犬だな」と笑われた。