第7章 やきもちの本音
私の腰にしがみついて離れない彼の頭をよしよし撫でてやりながら、私は安堵のため息を吐き出した。そこで突然、私の横をするりと抜けて、玄関のドアノブに手をかけるキヨくん。
「ンじゃ、ハナさん来てくれたし、レトさんの面白い姿も見れたし、俺帰りまーす」
「え、えぇっ!? もう遅いから、電車なんて走ってませんよ? 泊まって行ってください、ルトさん寝かし付けたらお布団出しますから」
「だーいじょうぶでっす! 俺の彼女がこっから割と近くに住んでるんで、そっちにお邪魔になりますよ。もう連絡はしてあります」
「へえ、そうだったんですか。ごめんなさいね、またルトさんがご迷惑をおかけして。今度またご飯食べに来、……って、き、きききキヨくん彼女出来たんですか!?!? 嘘ぉ!?」
「うわレトさんと全く同じ反応だ」
似た者夫婦め、なんてニヤニヤからかってくるキヨくん。残念ながらまだ夫婦ではないんですけれど、そんなことより、か、彼女! キヨくんの彼女!? めっちゃ気になります!!!!
「そういうわけで、後はよろしくお願いしまーす。戸締りちゃんとしろよー」
「えっ、ま、キヨくん待ってー!!」
詳しい話を聞きたい私の声も虚しく、彼はひらひら手を振って去って行き、扉は静かに閉まっていくのだった。
「ルトさん、ルトさん起きてる? キヨくん帰っちゃいましたよ。明日改めてちゃんとお礼をしましょうね」
「んん〜」
俯せに寝転がる彼は、私の膝に顔を埋めて唸った。きっとお酒のせいで眠くて眠くて仕方ないのでしょう。腰に回された腕の力が先程よりぎゅうっと増した気がする。ちょっと苦しいです、なんて言ってもこの酔っ払いさんはちっとも聞いてくれない。
「それにしても、気になりますね、キヨくんの彼女」
どんな娘なんだろう、あの子が惚れるような娘だから、きっと良い子なんだろうなあ。なんだか親のような気持ちで嬉しくてほっこりしてしまう。
「キヨくん、良い子だもんね、きっと素敵な彼女を見つけたんだろうな。ちょっと口が悪くてはしゃぎ過ぎてしまうところはあるけど、こんなぐでんぐでんの先輩を家まで送ってくれるぐらい、優しい子ですもんね」